7月31日の午後、真夏にしては、気持ちのよい風が火照った頬を通り過ぎて行く。
その日の演題は、宮沢賢治作「どんぐりと山猫」
牛丸先生は、鈴鹿の中央病院から、息子さんのお嫁さんが運転する車で、じかに鈴鹿カルチャーステイションにやってきた。
セミナールームの席について、一呼吸。
「今は、病院で避暑生活しています。今日は、話しに行けるかなと思っていました。
それでも、ベットから立ったら、立てたので、来ました。どこまでもつか・・・
さっそく、はじめましょうかね」
聴講の人の手元には、「どんぐりと山猫」全文がある。これは、孫娘がパソコンで入力したそうだ。
孫娘には、アルバイト料を前渡ししてあるそうな。ただし、誤字・脱字があるときは、一字千円の
ペナルテイーがあるという。さて、この日は・・・
「では、今日はズルをして、作品はみなさんがめいめい、自分で声を出して読んでみてください。
そして、みんなで感想を出し合ってみてください。・・でも、みんなから出なかったポイントについては、
私から、いじわるい見方を出すようにしますから、そのつもりで・・では、はじめてください」
「おかしなはがきが、ある土曜日の夕方、一郎のうちにきました。
かねた一郎さま 九月十九日
あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。
あした、めんどなさいばんしますから、おいでんなさい。
とびどぐもたないでくなさい。
山ねこ 拝
こんなのです。字がまるでへたで、墨もがさがさして指につくくらいでした。
けれども一郎はうれしくて、うれしくてたまりませんでした。
はがきをそっと学校のかばんにしまって、うちじゅうとんだりはねたりしました。
ね床にもぐってからも、山猫のにゃあとした顔や、そのめんどうだという裁判の
けしきなど考えて、おそくまでねむりませんでした」
はじめ、参加者の声は、低かったけど、だんだん大きくなったようです。
この一節で、感想を出し合いました。
「手紙が来たということ自体うれしい」
「プレゼントをもらうとき、中身を見る前から、嬉しい気持ちになるみたいに・・」
(この日、韓国からも、宮沢賢治に関心があるといって、聞きにきました。左の人)
牛丸先生「いろいろ出してもらったけど、もっとも大事なポイントが、まだでていないんだなあ・・」
参加者、めいめい首をひねる。
しばらくして、牛丸先生。
「書きだしのところ、<おかしなはがき>、これが冒頭に出てくる。ここんとこ、<おかしな>というとこ ろ。そこで、この一節のところで<おかしな>ところ、あげてみてください」
また、めいめい「はがきの文章がおかしい」「はがきの日付かな?」とか、出てきた。
先生「もっと、おかしなところがあるんだなあ・・・・この手紙には、おいでくださいと言っているけど、 肝腎の場所が書いていない」
「どんぐりと山猫」という作品に関心がある方は、ぜひお読みください。
その場に居合わせた一人ひとりは、<おかしな>な世界に先生と引き込まれて行ったのだった。
<おかしな>を辞書で引くと、
1、笑いだしたくなるような。滑稽な。
2、常識では信じられないような。妙な。変な。
(写真は、岩合光昭さん「ネコさまとぼく」から)
最後に、先生のコメント。
「文章には、表れていないが・・
どんぐりが木から落ちて、姿形を維持できるのは、せいぜい一カ月。
動物・雨・霜・雪などによって消えたり、変形してしまう。
はかない一生の中で、仲間と争う愚かさ・・
賢治は人間についても、同じ思いをこめているように思われる」
(「どんぐりと山猫」は、童話集「注文の多い料理店」のなかに収録されている。大正13年発行)
次回は、8月28日。
「担当の医師が、カルテの隅に、「8月28日」と書いてくれるんですね。
今日は、病院の職員さんも、聞きに来てくれました」
そうそう、次回の作品は?
宮沢賢治作「オッペルと象」
(たのしみで、うれしくて、ねむりませんでした)
今夜の、自分はどうなるだろう?
その日の演題は、宮沢賢治作「どんぐりと山猫」
牛丸先生は、鈴鹿の中央病院から、息子さんのお嫁さんが運転する車で、じかに鈴鹿カルチャーステイションにやってきた。
セミナールームの席について、一呼吸。
「今は、病院で避暑生活しています。今日は、話しに行けるかなと思っていました。
それでも、ベットから立ったら、立てたので、来ました。どこまでもつか・・・
さっそく、はじめましょうかね」
聴講の人の手元には、「どんぐりと山猫」全文がある。これは、孫娘がパソコンで入力したそうだ。
孫娘には、アルバイト料を前渡ししてあるそうな。ただし、誤字・脱字があるときは、一字千円の
ペナルテイーがあるという。さて、この日は・・・
「では、今日はズルをして、作品はみなさんがめいめい、自分で声を出して読んでみてください。
そして、みんなで感想を出し合ってみてください。・・でも、みんなから出なかったポイントについては、
私から、いじわるい見方を出すようにしますから、そのつもりで・・では、はじめてください」
「おかしなはがきが、ある土曜日の夕方、一郎のうちにきました。
かねた一郎さま 九月十九日
あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。
あした、めんどなさいばんしますから、おいでんなさい。
とびどぐもたないでくなさい。
山ねこ 拝
こんなのです。字がまるでへたで、墨もがさがさして指につくくらいでした。
けれども一郎はうれしくて、うれしくてたまりませんでした。
はがきをそっと学校のかばんにしまって、うちじゅうとんだりはねたりしました。
ね床にもぐってからも、山猫のにゃあとした顔や、そのめんどうだという裁判の
けしきなど考えて、おそくまでねむりませんでした」
はじめ、参加者の声は、低かったけど、だんだん大きくなったようです。
この一節で、感想を出し合いました。
「手紙が来たということ自体うれしい」
「プレゼントをもらうとき、中身を見る前から、嬉しい気持ちになるみたいに・・」
(この日、韓国からも、宮沢賢治に関心があるといって、聞きにきました。左の人)
牛丸先生「いろいろ出してもらったけど、もっとも大事なポイントが、まだでていないんだなあ・・」
参加者、めいめい首をひねる。
しばらくして、牛丸先生。
「書きだしのところ、<おかしなはがき>、これが冒頭に出てくる。ここんとこ、<おかしな>というとこ ろ。そこで、この一節のところで<おかしな>ところ、あげてみてください」
また、めいめい「はがきの文章がおかしい」「はがきの日付かな?」とか、出てきた。
先生「もっと、おかしなところがあるんだなあ・・・・この手紙には、おいでくださいと言っているけど、 肝腎の場所が書いていない」
「どんぐりと山猫」という作品に関心がある方は、ぜひお読みください。
その場に居合わせた一人ひとりは、<おかしな>な世界に先生と引き込まれて行ったのだった。
<おかしな>を辞書で引くと、
1、笑いだしたくなるような。滑稽な。
2、常識では信じられないような。妙な。変な。
(写真は、岩合光昭さん「ネコさまとぼく」から)
最後に、先生のコメント。
「文章には、表れていないが・・
どんぐりが木から落ちて、姿形を維持できるのは、せいぜい一カ月。
動物・雨・霜・雪などによって消えたり、変形してしまう。
はかない一生の中で、仲間と争う愚かさ・・
賢治は人間についても、同じ思いをこめているように思われる」
(「どんぐりと山猫」は、童話集「注文の多い料理店」のなかに収録されている。大正13年発行)
次回は、8月28日。
「担当の医師が、カルテの隅に、「8月28日」と書いてくれるんですね。
今日は、病院の職員さんも、聞きに来てくれました」
そうそう、次回の作品は?
宮沢賢治作「オッペルと象」
(たのしみで、うれしくて、ねむりませんでした)
今夜の、自分はどうなるだろう?
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