一日中、巣を留守にしていた番の燕は、夕食時には帰って
きていた。
一羽は完成した巣にすっぽり入り、もう一羽は隣の換気口の
上に留まっている。
お互い、顔は差し向かいである。
一日どこで、なにをしているのだろう。
子どものころは、街でも燕が飛び交っていた。
地面すれすれに低空飛行したかと思うと、次の瞬間は空に
舞い上がっていた。
カッコいいと思ったんだろう。燕のように飛ぶ紙飛行機を
好んで作っていた。
最近は街では燕、とんと見かけない。
わが家からすこし離れているが、伊勢湾に向かって水田が
広がっている。
もしかしたら、そこで食料の虫とりをしているのか。
巣で卵を抱く、気配はない。
昨日も巣から早朝にでかけて、一日もどってこない。
夕餉を終えて、軒を見に行くと、番の燕がそれぞれ、所定の
場所にいる。
「ここで、産卵するかなあ」楽しみにしている。
やさしい気持ちになる。
晴天や日がな留守居の燕かな
いくたびも見上げて見るや燕の巣
夕餉どき番で帰宅燕かな