昨夜、友ちゃんが「ご飯食べさせてえ」と夕方やってきた。
妻が「岳くん、呼ばないの?」とふと言ったみたい。
友ちゃんは、岳くんに電話したら「じゃあ、行くわ」と
いうことだった。
「岳くん、どっから来るの」
「小牧から」
「ええ、じゃあ、車で1時間」
1時間後にやってきた。
「わあ、こんなご馳走。やってきた甲斐があったなあ」と
岳くん。
「乾杯!」
岳くんは、妻小浪には5歳の時から世話になっている。
しばし、往時を懐かしんだ。
だが、もう、40歳近い社会人。
近々、友ちゃんといっしょに暮らしはじめる。
「こんなことになるなんて、思ってもみなかった」と岳くん。
すでに、いまから、いろんなことがあるらしい。
友ちゃんは自分の気持ちを聞いてほしいだけなのに、
岳くんは「そんなのは、こうしたらいいだけじゃないか」と
正解をいってくれるのよね、と楽しそうにぼやく。
ああ、いいなあ。
贈る言葉。
祝婚歌 吉野弘
二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい