生まれついての短気

(前回からの続きです)さて、気長安楽の指南を受けに来た、生まれついての癇癪持ちの短気者。先生は知り合いの万兵衛から聞いた話を伝えます。今日はその万兵衛が語ったこと--
『ある時、蔵の中で仕事をしておりますと、外でせわしなく私の名前を呼ぶ声がしました。私は何度も返事をしたのですが相手には聞こえないようで、なおも激しく私を呼びたてますから、私も次第にイライラしてきました。どうもその声は下働きの千吉のようで、下働きの分際で番頭に対して横柄な態度を取る奴だと頭にきました。それならと、わざと返事もしないでいると、蔵の外の声は大いに怒り、声を荒らげて、早く来たれ、すぐに来たれと憎々しげに叫びます。私もさすがに堪忍袋の緒が切れて、下働きの身でありながら、そのような無礼な千吉をこらしめてやろうと棒を手にして外に出ました。さて、目に物を見せてやろうと飛びだしたのですが、そこにいたのは千吉ではなくご主人だったので、思わず棒を後ろへ投げ捨ててその場に座って、冷や汗を流してお詫びしたのです。
 ここで気づきました。癇癪や短気は、気持ちの持ちようで、下働きの千吉だと思えば堪忍できませんが、ご主人ならば癇癪短気も起こらず、素直に頭を下げて謝れるのです。つまり、癇癪や短気は生まれつきではなく、こちらの心の持ちようだと覚悟いたしたのです。その覚悟のおかげで、その後は再び癇癪や短気は起きなくなりました』
--この後の先生の言葉まで書くと長くなるので、残りは次回! 

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