風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

佐々木朗希投手の完全試合

2022-04-13 21:15:41 | スポーツ・芸能好き
 夜に灯りがない生活は、なかなか神秘的だ。十数年前、オーストラリアのウルル(エアーズロック)を訪れたとき、満点の星空を見上げながら、昔の人は月と星と太陽を頼りに生活していたことを思うと、現代人には想像もつかないほど自然の恵みに感謝し、またその脅威に立ち向かって、人間の存在の小さいことを、骨身に沁みて感じていたことだろうと、漠然と思ったものだった。何を唐突に、と思われるかも知れないが、実は、日曜の夜、突然、部屋の照明がつかなくなって、この三晩は、真っ暗闇の中でパソコンの明かりを頼りに過ごすのも癪で、とっとと不貞寝したのだった。今日、修理に来てもらったところ、案の定、ブレーカーの故障のせいだった。ブレーカーも家電製品と同じで劣化する。
 前置きが長くなったが、日曜の夜と言えば、佐々木朗希投手がプロ野球史上16人目の完全試合を達成した日だ。遅まきながら、その感動を書き留めておきたい。
 野球ファンにとって、贔屓の選手であろうがなかろうが、斯様な偉業は胸躍る瞬間である。それが「令和の怪物」と話題の選手となればなおさらだ。9回27人の打者に対して105球、19奪三振、圧巻は、1回2アウト後の吉田正尚外野手から、5回3アウト目の西村凌外野手まで、13者連続で三振を奪ったところだ。完全試合は28年振り、20歳5ヶ月での達成は62年振りの史上最年少、13者連続奪三振は64年ぶりの日本記録、19奪三振は27年振りの日本タイ記録と、記録づくめだった。
 数字も凄いが、中身も凄い。ほぼ、自己最速タイとなる164キロの直球と140キロ台後半の高速フォークとのコンビネーションだけで、昨年の優勝チームをきりきり舞いさせたのである。藤川球児氏は、「普通は打者が苦手なコースを攻めるが、彼には必要ない。スピンの利いた160キロ超の浮き上がる直球とフォークで打者を圧倒できている」「三振を奪うための方程式も構築されており、カウント球と勝負球の球種が違う。同じフォークの場合は腕の振りによる緩急で決め球との差をつけている」と解説された。データスタジアム社のアナリスト・佐々木浩哉氏は、「最速164キロをマークした直球が脚光を浴びることが多い佐々木投手ですが、主役はフォークボール」と分析される。19奪三振中、15個をフォークボールで奪い、カウント球としても有効で、36球を投じたフォークのストライク率は実に83.3%、とりわけフォークは球界屈指の空振り率を誇るそうだ。
 本人曰く、「正直あまり意識していなくて、打たれたら、それでいいかなと思って、最後まで松川を信じて投げました」。怖いもの知らずなのか、大物なのか(否、その両方だろう)。そこまで言わしめる高卒ルーキーの松川虎生捕手も褒めてあげたい。それから、佐々木朗希投手の入団以来、一軍に帯同させ、大リーグの経験豊富な吉井理人・一軍コーチの指導のもとでじっくり育てた千葉ロッテも褒めてあげたい。こうして眺めてみれば、高校野球の地区予選決勝に投げさせなかったのは、良かったのか悪かったのか今もって判断は難しいが、いずれにしても報われたと言うべきだろう。
 もう一つ三振を奪っていれば・・・と惜しむ声があるが、焦る必要はない。現在、34イニング連続奪三振を続けており、次の試合で日本記録の43イニングに挑むことになる。オールスターで江夏が達成した9者連続奪三振(あるいは江川の8者連続奪三振)のような息詰まる対戦が待ちきれない。
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