かれこれ二週間ほど前になりますが、南米・ボリビアにある世界最大の塩の湖・ウユニ塩湖に、レア・メタルであるリチウムが未開のまま大量に眠っているので注目を集めているという記事が出ていました。リチウムはご存知の通り、パソコンや電気自動車に使われる蓄電池(リチウム・イオン電池)の原料で、埋蔵量が少なく偏在している(特に南米に多い)ことから、石油以上に制約資源となる可能性があると言われています。ボリビアには世界の埋蔵量の約半分に相当する推定540万トンがあると言うので、日・中・韓・欧州のみならず、隣国ブラジルからも秋波を送られているのだそうです。ちょっと興味をもってボリビアについて調べてみました。
ボリビアの面積は日本の約3倍ですが、国土の三分の一近くをアンデス山脈が占める“高原の国”として知られ、国内の主要都市の半分近くが標高2千~4千mに位置し、人口は1000万人にも満たない小国で、一人当たりGDPは4330ドル(2008年)と日本のほぼ十分の一に過ぎません。かつて、ティティカカ湖周辺では約3千年前にティワナク文化や古代文化(プレ・インカ文化)を生みだしましたが、10世紀頃、ペルーのクスコを中心に勢力を広げてきたインカ族に侵入されてインカ帝国の一部となり、ペルーと同じ文化圏を形成して来ました。インカ帝国末期の16世紀にはフランシスコ・ピサロ率いるスペイン軍に征服され、1824年、アンデス諸国を独立に導いたシモン・ボリーバルの援助を受けたスクレ将軍の指導のもとで独立するまで、スペインの植民地となりました。
16世紀半ばには、ボリビアの首都ラパスから南東に約440km に位置する、人が住む都市としては世界最高地点(標高4000m)のポトシで、世界最大の銀鉱が発見され、労働力としてアフリカ人奴隷も連れて来られて、人口は当時のロンドンを凌ぎ20万人を越えるほどに栄えましたが、19世紀には銀はすっかり枯渇し、19世紀末からは大量の錫が採掘されるようになりましたが、それも現在ではほぼ枯渇し、その間、資本が乏しいため、資源の利権を巡って外国資本と結びやすく、クーデターなど国内対立が続く政情不安な国で、貧困にあえいだ苦い歴史を背負っています。そのため、今年1月に採択された憲法改正では、天然資源を国家所有に決め、ボリビア政府には抽出する技術も資本もないリチウムについても「ボリビア固有の宝」として採掘権を他国に渡さず、資金と技術だけを引き出すという、資源ナショナリズム色の強い政策を展開しているそうです。
ボリビアと言えば、私にとっては2つのことで忘れられない国、貧しいながらもロマンティシズムを掻き立てられる国です。
一つはアメリカ映画「明日に向かって撃て!」(1969年)で、主人公の銀行強盗ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドがアメリカの西部を追われて逃亡した先がボリビアでした。「雨に唄えば」の哀愁を誘うテーマ曲と、今度はオーストラリアに行こうと約束した後、保安官に包囲される中を飛び出して無数の銃声が鳴り響くストップ・モーションのラスト・シーンが、忘れられません。
もう一つは、1967年10月8日、ウルグアイ人のビジネスマンとしてボリビアに潜入しボリビア民族解放軍を設立してゲリラ戦を闘っていた、アルゼンチン生まれでキューバ革命の指導者の一人、チェ・ゲバラが、ボリビア軍により捕縛されたのが、サンタクルス市から南西に150kmほど離れた小さな村イゲラの傍のチュロ渓谷だったと言われています。翌日には殺害され、南米に社会主義革命を起こす彼の夢は敗れ去りました。私は社会主義とは相容れませんが、彼の民族主義的心情には共鳴します。
ボリビアは、農業(大豆、砂糖等)や鉱業産品(亜鉛、錫、天然ガス等)を中心とする一次産品への依存度が高く、総輸出の8割を占め、2006年1月に大統領に就任したモラレス政権下では、資源価格上昇を背景に、安定した経済成長、外貨準備高増大、財政黒字化等の成果があがりましたが、2007年以降は、食料品価格の高騰によりインフレ率が上昇するなど、相変わらず国際価格の影響を受けやすい経済構造にあります。かつて「黄金の玉座に座る乞食」と形容された姿そのままに、豊かな天然資源を持つにも関わらず南米で最貧国を脱することができないところは今もなお変わりません。
リチウムの話に戻ると、海水中には2300億トンものリチウムが溶けていると言われており、採集がコスト的に引き合うようになれば、ボリビアはひとたまりもありません。資源大国であるがゆえに先進国に翻弄されて来たとも言えるボリビアは、経済的に自立することがあるのでしょうか。こうしてボリビアの歴史を垣間見ると、日本に資源がないことが必ずしも不幸とは言えないと思えるから不思議です。
上の写真はご存知シンガポールのマーライオン。人を資源として成長を続けるシンガポールに学ぶところがあるかも知れません(更に言うと、シンガポールのコンサルタントだった大前さんに学ぶところもある?)。
ボリビアの面積は日本の約3倍ですが、国土の三分の一近くをアンデス山脈が占める“高原の国”として知られ、国内の主要都市の半分近くが標高2千~4千mに位置し、人口は1000万人にも満たない小国で、一人当たりGDPは4330ドル(2008年)と日本のほぼ十分の一に過ぎません。かつて、ティティカカ湖周辺では約3千年前にティワナク文化や古代文化(プレ・インカ文化)を生みだしましたが、10世紀頃、ペルーのクスコを中心に勢力を広げてきたインカ族に侵入されてインカ帝国の一部となり、ペルーと同じ文化圏を形成して来ました。インカ帝国末期の16世紀にはフランシスコ・ピサロ率いるスペイン軍に征服され、1824年、アンデス諸国を独立に導いたシモン・ボリーバルの援助を受けたスクレ将軍の指導のもとで独立するまで、スペインの植民地となりました。
16世紀半ばには、ボリビアの首都ラパスから南東に約440km に位置する、人が住む都市としては世界最高地点(標高4000m)のポトシで、世界最大の銀鉱が発見され、労働力としてアフリカ人奴隷も連れて来られて、人口は当時のロンドンを凌ぎ20万人を越えるほどに栄えましたが、19世紀には銀はすっかり枯渇し、19世紀末からは大量の錫が採掘されるようになりましたが、それも現在ではほぼ枯渇し、その間、資本が乏しいため、資源の利権を巡って外国資本と結びやすく、クーデターなど国内対立が続く政情不安な国で、貧困にあえいだ苦い歴史を背負っています。そのため、今年1月に採択された憲法改正では、天然資源を国家所有に決め、ボリビア政府には抽出する技術も資本もないリチウムについても「ボリビア固有の宝」として採掘権を他国に渡さず、資金と技術だけを引き出すという、資源ナショナリズム色の強い政策を展開しているそうです。
ボリビアと言えば、私にとっては2つのことで忘れられない国、貧しいながらもロマンティシズムを掻き立てられる国です。
一つはアメリカ映画「明日に向かって撃て!」(1969年)で、主人公の銀行強盗ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドがアメリカの西部を追われて逃亡した先がボリビアでした。「雨に唄えば」の哀愁を誘うテーマ曲と、今度はオーストラリアに行こうと約束した後、保安官に包囲される中を飛び出して無数の銃声が鳴り響くストップ・モーションのラスト・シーンが、忘れられません。
もう一つは、1967年10月8日、ウルグアイ人のビジネスマンとしてボリビアに潜入しボリビア民族解放軍を設立してゲリラ戦を闘っていた、アルゼンチン生まれでキューバ革命の指導者の一人、チェ・ゲバラが、ボリビア軍により捕縛されたのが、サンタクルス市から南西に150kmほど離れた小さな村イゲラの傍のチュロ渓谷だったと言われています。翌日には殺害され、南米に社会主義革命を起こす彼の夢は敗れ去りました。私は社会主義とは相容れませんが、彼の民族主義的心情には共鳴します。
ボリビアは、農業(大豆、砂糖等)や鉱業産品(亜鉛、錫、天然ガス等)を中心とする一次産品への依存度が高く、総輸出の8割を占め、2006年1月に大統領に就任したモラレス政権下では、資源価格上昇を背景に、安定した経済成長、外貨準備高増大、財政黒字化等の成果があがりましたが、2007年以降は、食料品価格の高騰によりインフレ率が上昇するなど、相変わらず国際価格の影響を受けやすい経済構造にあります。かつて「黄金の玉座に座る乞食」と形容された姿そのままに、豊かな天然資源を持つにも関わらず南米で最貧国を脱することができないところは今もなお変わりません。
リチウムの話に戻ると、海水中には2300億トンものリチウムが溶けていると言われており、採集がコスト的に引き合うようになれば、ボリビアはひとたまりもありません。資源大国であるがゆえに先進国に翻弄されて来たとも言えるボリビアは、経済的に自立することがあるのでしょうか。こうしてボリビアの歴史を垣間見ると、日本に資源がないことが必ずしも不幸とは言えないと思えるから不思議です。
上の写真はご存知シンガポールのマーライオン。人を資源として成長を続けるシンガポールに学ぶところがあるかも知れません(更に言うと、シンガポールのコンサルタントだった大前さんに学ぶところもある?)。