せっかく北陸に住んでいるので、全国の旅行者が集まるイベント、「おわら風の盆」に行ってみたいと思っていました。
宿もなかなか取れないなかで、おわら風の盆をやる富山県越中八尾の街から30分ほど山奥の方に行ったところにある牛岳温泉スキー場の宿が空いていて、しかもおわらへの送迎をやってくれることが分かり、そこに泊まることにしました。
八尾の街の近くで車を降りて、急な坂を登っていくと、坂の多い八尾の街の一番高いところに出ます。街の通りにはぼんぼりに明かりが灯り、古い街並みに情緒を醸し出しています。踊りが始まる19時まで30分ありますが、もう通りには観光客が多く見られ、思い思いの場所に陣取っています。
八尾の街には11の地区があり、地区ごとに、踊りが見られる日時が決まっています。そして、地区ごとに、通りを歩きながら踊っていく「流し」というスタイルと、通りの一か所に集まって輪になって踊る「輪踊り」というスタイルがあるようです。
まずは、東新町地区の流しを見ました。女の子の踊り手に続いて男性の踊り手、その次に三味線や二胡を演奏する地謡と続きます。落ち着いた感じの音色と優美な踊りが、ぼんぼりに照らされた古い街並みに合って素敵な雰囲気を醸し出しています。
一つの通りが終わると、時間を見ながら次の踊りが見られる場所に移動し、別の地区の踊りを見ます。通りによって、「日本の道百選」に選ばれている諏訪町と呼ばれる古い街並みや、お土産や食べ物などの商店が並ぶ通りなど、夏の夜の町歩きも楽しめます。もちろん、地区によって、微妙に踊り手の構成や踊りの内容が違い、それぞれに楽しめます。
町の中ほどにある鏡町という地区では、一軒のおうちの前の路地で輪踊りをやっているのを見ることができました。二人の男性と二人の女性がそれぞれ組になって、三味線と二胡の生演奏と、生歌の八尾音頭に合わせて踊ります。観光客がぐるりと取り囲む中で、幻想的な風景でした。
3日間で全国から23万人もの人が集まるおわら風の盆の魅力は、菅笠をかぶった男女が二胡と三味線の落ち着いた音色に合わせて踊る優美な風景と、ぼんぼりに照らされた古い街並みが坂にそって浮かび上がる、八尾の街の雰囲気だと思います。
踊り自体は、地区ごとに違いがあること、町を流し歩くこと、男女の踊りと地謡がセットになっていること、観光客が踊りを見ようと路地から路地へ歩くことなど、沖縄のエイサーに似ているなあと思いました。もちろん、踊りのスタイルは、勇壮な若者向けのエイサーと全然違うのですが。
また、昔の街並みの中を踊るという点では、郡上八幡の郡上踊りとも共通点がありますが、あちらは通りで観光客も一緒になってみんなで踊る、という雰囲気があり、それぞれ違った良さがあると思いました。