ブルーシャムロック

此処はtomohiroのオリジナル小説サイトです。
小説主体ですので、小説に興味の無い
人は、退出下さい。

嗚咽

2011-12-16 19:18:17 | 信・どんど晴れ
羽田を出発した飛行機が、鹿児島空港に着いたときであった。
一人の女性が、飛行機から出てきた。腰まである長い髪をポニーテールに
束ねていた。浅黒く鹿兒嶋よりも南の島の出身であることが分かった。
女性の名前は松本佳奈。
つい最近まで関東の大学に在学していたが、父親の病気という一報を聞き
郷里の奄美大島に帰るところである。
現在は大島行きの飛行機にトランジットをするところであった。
「跡数分か」
彼女は、自分の持っているスマートホンをみた。
時計は昼の12:30を指していた。
佳奈自身、もしかしたら父親が倒れたというのは嘘の可能性もあるかなと
思って、大島行きの飛行機が來るのを待っている。
この空港はご存じの通り、日本本土の一番南。
自分が關東は言うに及ばず、日本本土からも切り離されるという事を特に恐れていた。
「あの嫌なシマから出るために関東に行ったはず。」
佳奈はつぶやいた。
飛行機の表示板がぱたぱたと音を立てて、行き先を告げる。
東京、大阪、沖縄・・・。
東京という表示が出た。
このまま関東に歸ろう。
ふと思ったが、彼女を我に返したのは
奄美という表示。
そして、窓ガラス越しに見える奄美行きと思われる飛行機がゆっくりと入ってくる。
乗客に乗り込む許可が出て、座席に座った佳奈。
彼女は、号泣した。
ゆっくりと飛行機は鹿児島空港を離れていく。
關東とも本土とももうあえないのがつらかった。
おわり
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 岡崎で聞いた話_4 | トップ | 出て行った物は南国に消える... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

信・どんど晴れ」カテゴリの最新記事