ブルーシャムロック

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宍道湖と中海に捧げるバラード_1

2010-10-01 20:57:29 | 信・どんど晴れ
「だれと電話をしていたんですか?」
病院の一室で長男と寝ているのは、雲伯地方を根城にラノベなどを執筆している作家
向田利一郎の妻浪江である。ふと懐かしそうな感じに成っていた夫に質問をした。
「ああ、小学校時代の恩師とだ。小学校を卒業した跡も、交流が続いている。」
携帯の電源を切って、浪江の方を見た。
「小学校時代の恩師とですか。米子のご両親とは電話をかけないのですか?」
浪江は悲しい顏をした。
もともと、向田利一郎は大学進学で松江に引っ越してきて、そのまま棲み着いている有様である。
生まれたのは松江だが、幼い頃に米子に引っ越して高校までそこで暮らしていた。
大学合格までは上手くいっていた・・・。しかし、就職せずにくだらない小説を
書いていた、利一郎に愛想を尽かして、両親とは仲がこじれたままだった。
浪江とは大学在学中に出会う。彼女の出身地は出雲市だ。
「もうすぐ、出雲市の両親が見えてね。その両親が地元では新進気鋭の造り酒屋の
日本酒を持ってくる見たい。」
浪江の言葉を聞いた利一郎は窓の風景を見ていた。
「そういえば、この前も来た藤崎と綾田といわれる關東から来た編集者、なんだか
俺に、小説を執筆してくれと執拗くせがむな、他に中山とかいう編集者も
俺に時代小説を執筆して欲しいと言うが、ラブコメしか書いたことのない俺に
どう書けと思ったけれども、ぼちぼち返答を出そうと思う。」
窓の風景を見ていた利一郎は浪江と長男を見た。
「追い出すんですか。」
浪江は、複雑な顏をした。
つづく
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