ブルーシャムロック

此処はtomohiroのオリジナル小説サイトです。
小説主体ですので、小説に興味の無い
人は、退出下さい。

原田騒亂記_5

2012-11-18 05:52:31 | 信・どんど晴れ
女将が、商工会議所と書かれた札束の袋を持ってきた。
「先日の盗まれた50万円が返ってきました。」
集められた従業員は騒騒していた。
「えっ、どこから出てきたの。」
仲居の一人が言った。
「ある人の手から私の手に戻ってきました。」
女将は厳しい表情だった。
「松本さんじゃないのですか?」
お金の有無を訪ねたのとは違う仲居が口を開く。
「はい。」
女将は言う。
その場所に居合わせた原田が動揺していた。
「原田さん、どうしたの?」
彼女の腰巾着のようになっていた人間が、そう訪ねた。
原田は一瞬だまり、重い口を開いた。
「そうねぇ。50万円を盗んだのは私です」
いつもの通り、ねっとりしていやらしい声である。
「まあ、加賀美屋の女将になって、乗っ取ってやろうと思ったけれどもねぇ。
でも、ダメだった。あそこにいる松本が好きみたい。」
と私を指した。
当然ながら、みんな騒然とした。みな原田に女将に特別扱いされて不満を買いやすい
私よりもアンチ松本票を託す原田が裏切り行為をしていたからだ。
「ということです。」
女将はそう締めくくった。
みんな、原田を攻撃したい氣持ちでいっぱいになった。
そして立ち去った跡、私の理解者である新一さんに訪ねる。
「なんで、こうなったんだろうね。原田しかり、其れより前の朝倉さんしかり、
女将や仲居頭に成りたい人は、みんなしっぽを出して加賀美屋とこの島を去っていく。」
あまり涙を流さない人間だけれども、悔しくて私は涙が出てきた。
すっかり顔を赤くした私に新一さんが
「何かを犠牲にして、支えなくてはいけない人間も居るのだ。もし、お前が
小田原に行きたいとか言うのであるならば、それは俺は許さない。」
と抑えたトーンで述べた。でも、なんで小田原なんだ?
新一さんの息子である二人の餓鬼も小田原っていっていたし。
そういえば、ここに来たばかりの時、住込のお手伝いさんだと間違えたのが
新一さんの妻であり、二人の餓鬼の母親である女性の出身地が小田原だと女将越しに
聞いた。
新一さんは、私の顔を見て
「他の人間が小田原に行くのであるならば、俺は、止めないが。」
と言う。
私は此處の人間や島の人間に従うしかないのか。
 2~3日後、私はお客の送迎に勤務先の営業車で、徳之島の空港に向かっていた。
空港に着いたとき、私の携帯端末にメールが来ていた。
新一さんからだ。
「鹿児島の市内だか、那覇で料理屋を開きたかった清作は、そのご考えを改めて
加賀美屋で働くことになった。騒動を起こした原田が一枚噛んでいた事をあいつは
白状した。」
という内容だった。
私は鹿児島空港から来るお客さんを待っていたそのとき見たのは原田だった。
「あらぁ、松本さん。」
客を待っていた私に目を合わせて原田は口を開いた。
「これから、私は那覇に帰るけれども、もしあんたと合うときは、あんたと島の人間
を絶望に追いやってやるわ。」
と自信に満ちた顔で私を見た。
最後まで、私にこだわっている人間だなと、私は考えた。
私も加賀美屋と島に縛り付けられるならば、彼女も執念にとらわれている。
おわり
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする