さあー、もうそろそろ普通の生活に戻ってもいいだろう。そう思って、マンションの外壁修繕工事の業者に、ルーフバルコニーに残っている植木鉢の処分をお願いする手紙を出そうと、パソコンの前に座った。印刷しようとしたら、「インクが無くなりました」の表示。
仕方がないのでいつもの文房具屋さんに行く。インクの番号をメモしていかなかったので、2度も行くことになった。店の主人は「お茶でも飲んで」と、声をかけてくれる。地域新聞を発行していた頃からの知り合いだから随分になる。カウンターの中に通され、主人が淹れてくれたお茶を飲みながら雑談する。
日展に行って来た話から、将棋の藤井聡太さんの街で知られる、瀬戸へ行って来た話など尽きなかった。主人は岐阜の生まれだが、もうこの街で文具店を開いて何年になるだろう。駅前の発展会の顔でもあるが、今は息子さんが店を仕切っているようだ。「故郷に帰っても、多くが次の世代に替っている」と、寂しそうだった。
私も彼も、高齢者の仲間入りである。「いつまでも年寄りが頑張っていては、若い人の邪魔になるだけ」と私が皮肉を言うと、「分かってはいるが、何にもしないのもなぁー」と口ごもる。バリバリ働いてきただけに、未練が残るのだろう。「今度、来た時は抹茶を飲ませてあげる」と言う。「抹茶を売っている店も無くなったが、名古屋で買って来るから」と。
同年代の仲間が少なくなり、話し相手が欲しかったのかも知れない。私もいろいろやっていた時はこの店にもよく来たが、今では文房具が必要になるような仕事をしていない。時代は変わっていく。年寄りは、昔を懐かしんでいられるのが一番幸せなのかも知れない。
『隆明だもの』を読み始めたが、娘からみた吉本隆明の最後の頃は、汚い老いぼれジジイでしかない。思想界の神様も、自分で排泄も出来なくなり、ヨレヨレの下着で過ごす、どこにでもいる老人だった。余りの悲惨な現実に読む気を失ってしまった。
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