西洋の昔話や童話は、「真実の愛」によって結ばれるものが多い。キリスト教の影響なのか、あるいはキリスト教が伝わる前から伝承されてきたものなのか、興味深い。『白雪姫』は毒リンゴを食べて死んでしまうが、王子が現れて白雪姫にキスをすると甦る説と、白雪姫の棺を運ぶ途中につまずいて揺れた時に白雪姫の口から毒リンゴが出て生き返る説とがある。
バレエ『白鳥の湖』も呪いにかけられて白鳥となった美しい姫がいて、姫に恋した王子が悪魔と戦って呪いを解く説と、戦ったけれど呪いを衝くことが出来ず、来世での「永遠の愛」を誓って共に死んでしまう説とがある。愛し合う男女が魔法によって引き裂かれようとするが、「真実の愛」のために果敢に戦って守ろうとする点では変わりない。
ラブストーリーの金字塔と言われる『美女と野獣』も「愛」がテーマだ。人間の女性の姿になった森の精は王子に恋して妊娠するが、王子は彼女との約束を破って金色の鹿を射止めてしまう。金色の鹿は森の精の化身で、森の王は怒って王子を野獣の姿にしてしまう。野獣が暮らす城に父親の身代わりとなってやって来た娘はいつしか野獣を愛するようになるが、人間の欲がふたりを切り裂いてしまう。しかし最後は娘の愛が野獣を呪いから救い出す。
考えてみると日本には、男女の愛をテーマにした昔話や童話はないように思う。『竹取物語』は若い女性が主人公だけれど、誰かに恋した様子もない。日本のように男女の関係についてはあけっぴろげで厳しくなかったわが国では、「真実の愛」はテーマになりにくかったのだろうか。男と女には真実はあるが、それを「真実の愛」と決めつける“唯一”という考え方がなかったと思う。
来年2月8日(日)に童話作家の藤真知子さんが大和塾の市民講座で『昔話と童話に学ぶ幸せのつかまえ方』を話されるが、「古今東西の童話を通して男女の関係についてもお話します」と言われているから、どんな話が聞けるか、楽しみにしている。会場は健康ドームで、時間は午後2時から4時まで。
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