昨日、まだ朝が明けない前、テレビでフィギア女子のフリー演技を見入った人が多いそうだ。私は夜中に起きなかったが、カミさんは中継を見たと言う。しかも、何度も同じ場面を見て涙を流している。ショートで不甲斐ない結果となった浅田真央さんが、彼女が「跳ぶ」と言っていた3回転半を成し遂げ、全ての演技を終って観客席に向かって頭を下げた時の、安堵したというかやり切ったというか、喜びとも悲しみとも思われる場面である。私は今朝のニュースで見たが、やはり泣けた。
余りにも期待が大きかった。「国を背負っている」意識が強かった。重圧に身体が堅くなっていた。伸びやかな演技が見られなかった。見ている方が気の毒に思えた。結果なんかどうでもいいから伸び伸びとやってと、応援したくなった。これからフリーが始るという時に、東京オリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相が講演で、「あの子(浅田選手のこと)は、大事な時には必ず転ぶ」と言い、「浅田選手が3回転半を成功させれば、団体戦は3位になれた」と話したそうだ。
普通のオジサンが酒飲みながらするなら許されても、オリンピックの肩書きを背負った元首相がする話ではない。NHKの会長に指名された籾井さんが「慰安婦はどこの国にもあった」とか、同じくNHKの経営委員になった百田さんが「南京虐殺はなかった」とか、首相補佐官の江藤さんがユーチューブに「安倍首相が靖国神社に参拝したことをアメリカ政府は失望したと言ったが、失望したのはこっちだ」と投稿したりとか、このところ公人の無責任な発言が目立つ。思いやりもなければ考え深さもない。
江藤補佐官はアメリカ政府要人に会って、安倍首相が靖国に参拝するがよろしくと根回ししたのに裏切られたという思いなのだろう。アメリカ政府要人からすれば、「慎重に」と伝えたのにということでもある。外交は本音の部分と根回しや打診の部分など、一筋縄ではいかない。江藤さんの投稿も別の意図があるのかも知れない。けれど、森元首相の発言は余りにも思慮に欠ける。籾井さんや百田さんの発言も公人である立場を忘れている。個人が何を考えていても、それは自由だ。けれど、公人が発言すれば、その組織を代表することになる。軽い人が多くなったのか、それとも布石なのか、恐い時代である。