最近、何となく見難い。メガネを新しくしたけれど、そんなに変わった気がしない。メガネ店の人は「眼科で相談された方がいいですよ」と言う。そういえば、私の周りでも身体の不調を口にする人が増えた。そういう人を見ると、それまで全く気付かずにいたけれど、顔付きに元気がないし、歩き方も背筋がピンと伸びていない。慌てて鏡を覗いてみると、やはり私も老いた顔になっている。気持ちだけは10代の時と変わらないのに、肉体は確実に歳を重ねている。
先日も友だちと飲んでいて、「僕らはとんでもない時代を生きてきたね」という話になった。私よりも歳上の人は子どもながら戦争を体験している。米軍の戦闘機から機銃掃射を受けた人もいる。敗戦し焼け野原だったところに、人が集まり、家が建ち、商店ができ、工場も建設された。ほとんどの人が学校を出てすぐに働いた。お金を得て物を買い、また働いて服を買い、家まで建てた。食べるものもほとんど何もなかったのに、今は世界中の料理が味合える。
電話がなくて呼び出してもらっていた。自分の家にも電話が敷かれ、テレビが置かれ、冷蔵庫や洗濯機などの電化製品が並ぶようになった。今、家の中を見るとエアコンがあり、自動の風呂やトイレがある。新幹線であっという間に目的地へ行ける。飛行機で海外旅行もできるし、豪華客船の旅を楽しむ人もいる。自動車は一家に2台3台ある。パソコンで世界につながることにビックリしていたら、もっと小型で軽量の機器でどこでもいつでもつながることができるようになった。
「これ以上の贅沢を求めていいはずがない」「細胞を作り出すことも出来るということは、人間が追い求めてきた不老不死も実現できるということ、それはもう、人類の滅亡の道だろう」。そんな話がしばらく続いた。王制を倒し、専制政治から民主政治へ転換させてきた。科学の凄まじい発展で、豊かで恵まれた社会を創った。けれど、平等で公平な社会も、平和な社会も創り出すことはできなかった。