セレモニーは厳粛であるよりも感動的な方がいい。長女の結婚式が4日、花婿の実家がある神社で行なわれた。丁度、朝市も行なわれていて、おそらく江戸時代まではこんな風に人々が集まってきて結婚を祝ったと思われるように結婚式だった。宮司の下で神事を手伝う人を何と呼ぶのか知らないが、白い着物に青い袴をつけた3人はおそらくこの町の神社の氏子に違いない。この神社で結婚式を挙げるのは初めてということでかなり緊張している様子だった。
司会役も地元の人なのだろうが、口ひげは立派だったけれど何しろ段取りが悪かった。そうした手際の悪さがかえって落ち着かせてくれた。神社での文字通りの神前結婚式であった。神事に立ち会ったことは何度もあったが、この日の神事は特別のものだった。その極みは花婿の父親とその仲間による雅楽の演奏だった。聞くところでは、花婿の父親はこのためにこそ息子の結婚式をこの神社で挙げたかったという。
そして、花婿の姉が美しい声で「さくら」を独唱し、その後に父親とその仲間による伴奏で参加者全員が「さくら」を合唱する独創的なメニューも組まれていた。「雅楽の演奏」と書いたけれど、実際はクラリネットやサキソホンやトロンボーンやサンササイザーに和太鼓が加わっての演奏だったが、その楽曲は正しく「雅楽」になっていたし、「さくら」の演奏もよかった。「雅楽」は日本古来の楽器で演奏するものなので、「あんな西洋の楽器で演奏するものを雅楽とはいえない」と私の姉などはヘソを曲げていたけれど、そんなことにこだわることはないと思った。
少し雨が降ってきたので、私たちはタクシーで披露宴が行なわれる料亭へ出かけたが、新郎新婦は相合傘で街を練り歩いてくるという。披露宴のプログラムは全く聞かされていなかったので、どんな進行なのか不安だった。母親の知り合いという踊りの師匠がボーイスカウトでの新郎とのエピソードを語り、この街の芸者さん5人が日本舞踊を披露したり、父親の音頭で新郎新婦の街が歌われたり、これまでに経験したことのない披露宴が展開されていった。
新郎から「お父さんにはぜひ、愛について語ってもらいます」とは聞いていたけれど、どんな展開になるのかわからなかったので、ぶっつけ本番の方がいいと思って準備らしいことはしなかった。新郎の父親の出番の後、司会役の女性が「それではここで新婦のお父さんに登場していただきます」と言われた。愛について、どう話せばいいのか、しばし迷った。宴席でしかも皆かなり飲んだ後だ。それならば仕方ないと週刊ポストに載っていた渡辺淳一と高橋のぶ子の対談から、男と女はいつまでも恋をした方がいいのだという話をした。
本当はもう少し、男と女が恋をするにはお互いの信頼が必要だということを盛り込みかったけれど、そんな堅苦しい話は無用に思い、手を握っているだけでもいいのだということで話を結んだ。「人は誉められて大きくなるとか、SEXは身体を使った究極の会話だ」という対談の核心を話す余裕もなかったが、理屈っぽい新婦の父親を充分に演出できたと思う。次女やカミさんの妹やらが私の演説に合いの手を入れてもくれ、面白おかしくできたのではないだろうか。
極めつけは新郎による作詞作曲の「あなたのママに出会って恋に落ちたけれど、あなたと二人でママを幸せにしようね」という新郎の歌だった。孫娘のことを本当に気にかけてくれている様子が手に取るようにわかり、涙が止まらなかった。ありがとう。お幸せに。頑張ってください。応援しています。
司会役も地元の人なのだろうが、口ひげは立派だったけれど何しろ段取りが悪かった。そうした手際の悪さがかえって落ち着かせてくれた。神社での文字通りの神前結婚式であった。神事に立ち会ったことは何度もあったが、この日の神事は特別のものだった。その極みは花婿の父親とその仲間による雅楽の演奏だった。聞くところでは、花婿の父親はこのためにこそ息子の結婚式をこの神社で挙げたかったという。
そして、花婿の姉が美しい声で「さくら」を独唱し、その後に父親とその仲間による伴奏で参加者全員が「さくら」を合唱する独創的なメニューも組まれていた。「雅楽の演奏」と書いたけれど、実際はクラリネットやサキソホンやトロンボーンやサンササイザーに和太鼓が加わっての演奏だったが、その楽曲は正しく「雅楽」になっていたし、「さくら」の演奏もよかった。「雅楽」は日本古来の楽器で演奏するものなので、「あんな西洋の楽器で演奏するものを雅楽とはいえない」と私の姉などはヘソを曲げていたけれど、そんなことにこだわることはないと思った。
少し雨が降ってきたので、私たちはタクシーで披露宴が行なわれる料亭へ出かけたが、新郎新婦は相合傘で街を練り歩いてくるという。披露宴のプログラムは全く聞かされていなかったので、どんな進行なのか不安だった。母親の知り合いという踊りの師匠がボーイスカウトでの新郎とのエピソードを語り、この街の芸者さん5人が日本舞踊を披露したり、父親の音頭で新郎新婦の街が歌われたり、これまでに経験したことのない披露宴が展開されていった。
新郎から「お父さんにはぜひ、愛について語ってもらいます」とは聞いていたけれど、どんな展開になるのかわからなかったので、ぶっつけ本番の方がいいと思って準備らしいことはしなかった。新郎の父親の出番の後、司会役の女性が「それではここで新婦のお父さんに登場していただきます」と言われた。愛について、どう話せばいいのか、しばし迷った。宴席でしかも皆かなり飲んだ後だ。それならば仕方ないと週刊ポストに載っていた渡辺淳一と高橋のぶ子の対談から、男と女はいつまでも恋をした方がいいのだという話をした。
本当はもう少し、男と女が恋をするにはお互いの信頼が必要だということを盛り込みかったけれど、そんな堅苦しい話は無用に思い、手を握っているだけでもいいのだということで話を結んだ。「人は誉められて大きくなるとか、SEXは身体を使った究極の会話だ」という対談の核心を話す余裕もなかったが、理屈っぽい新婦の父親を充分に演出できたと思う。次女やカミさんの妹やらが私の演説に合いの手を入れてもくれ、面白おかしくできたのではないだろうか。
極めつけは新郎による作詞作曲の「あなたのママに出会って恋に落ちたけれど、あなたと二人でママを幸せにしようね」という新郎の歌だった。孫娘のことを本当に気にかけてくれている様子が手に取るようにわかり、涙が止まらなかった。ありがとう。お幸せに。頑張ってください。応援しています。