実務家弁護士の法解釈のギモン

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権利能力なき社団に対する強制執行(1)

2011-06-06 11:52:53 | 民事執行法
 すでに、最高裁で判決が言い渡されてから1年くらい経過するので、最新判例とは言えないかもしれないが、タイトルに記載したようなことに関する判例があるので、この点に関して一言。

 問題は、権利能力なき社団を名宛人とする債務名義に基づき、その権利能力なき社団の総有に属する不動産に対してどのようにして強制執行が可能か、ということである。何故このようなことが問題になるかというと、権利能力なき社団は、民事訴訟法上当事者能力が認められる。そのため、権利能力なき社団が債務名義の名宛人になることは十分に予定されていると言える。ところが、不動産登記名義については、権利能力なき社団の名義で登記することが認められておらず、必ず、当該権利能力なき社団の代表者その他の第三者の名義で登記せざるを得ない。そのため、当該不動産が実質的に権利能力なき社団の総有に属する財産だとしても、権利能力なき社団を名宛人とする債務名義では、差押えができないのではないかということが問題となるのである。
 条文上の根拠としては、不動産に対する強制執行の申立書の添付書類として、登記事項証明書が必要とされている(民事執行規則23条1号・当然、債務者名義の登記事項証明書でなければならない。)こととの兼ね合いが問題となる。

 この点に関し、判例では、「登記記録の表題部に債務名義上の債務者以外の者が所有者として記録されている不動産に対する強制執行をする場合に準じて、」といいつつ、当該「不動産が当該社団の構成員全員の総有に属することを確認する旨の上記債権者と当該社団及び上記登記名義人との間の確定判決その他これに準ずる文書を添付して、」強制執行ができると判示した。

 従前の解釈としては、執行力の主観的範囲の拡張について規定した民事執行法23条3項にいう、「目的物を所持する者」に該当するという解釈が可能か否かが争われていたようである。
 ただし、もともと民事施行法23条3項が想定しているのは、物の引き渡しに関する強制執行の場合を想定しており、金銭債権の執行を想定した条文ではないとのことである。このことは、既判力の拡張との関係でパラレルに考えれば、納得しやすい。そのため、民事執行法23条3項により処理するという解釈をとるにしても、いわば、「転用」である。

 要は、この判例は民事施行法23条3項の転用を否定し、あくまでも添付書類の内容の問題として処理したと言える。

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