実務家弁護士の法解釈のギモン

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権利能力なき社団に対する強制執行(4)

2011-06-16 10:09:48 | 民事執行法
 私が考えるには、まず、実体法の効力として、権利能力なき社団が現に占有(間接占有でもよいと思う)している不動産であること、その代表者その他これに準じるような立場にある人の名義で登記されている不動産であることが証明されれば、登記の推定力は代表者等の個人ために働くのではなく、権利能力なき社団の総有に帰属することを推定してもよいのではないかと思う。それは結局、代表者等の名義の登記そのものを権利能力なき社団の登記と見なして考えることを意味する。
 もしそのように考えることができれば、強制執行の場面でも、規則23条1号の趣旨からして、権利能力なき社団が現に占有(間接占有でもよいと思う)している不動産であること、その代表者その他これに準じるような立場にある人の名義で登記されている不動産であることを証する文書が提出されれば、それでよいのではないかとも思う。もしそうだとすれば、最高裁のいう、あたかも準名義文書を求める部分は、文書を例示しているにすぎないと考えるべきではないかと思う。

 もっとも、その後最高裁は権利能力なき社団の総有に属する第三者名義の不動産に対して仮差押えをする場合、民事保全規則20条1号イの解釈として(文言としては、民事執行規則23条1号とほとんど同じである)「強制執行の場合とは異なり」と明確に述べて確定判決等である必要はないと判示した(事案は未確定判決を提出した事案のようである)。そうなると、最高裁は仮差押えでは書証でよいが、本差押えは準名義文書を要求しているという基準がたてられそうであり、本差押えの場合の判例が判示した提出文書を例示と理解することは困難かもしれない。

 今後の実務的には、不動産に対する強制執行を行うことを前提に権利能力なき社団に対して金銭給付を求める訴えを提起する場合は、実際上、同時に当該不動産が当該権利能力なき社団の社員の総有に属することの確認の訴えも併合提起する必要が多くなると思う。かつ、当該訴訟の勝訴判決(債務名義性がある)だけで、最高裁判例の要求する文書としても満たされることになろう。

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