実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

株主総会招集通知の添付資料(1)

2012-02-27 15:27:46 | 会社法
 突然だが、会社法施行規則とか、会社計算規則とかいう会社法付属の規則をご覧になった方はいるだろうか。

 現行会社法は、なるべく解釈の余地を少なくするという趣旨だと思われるが、規定内容が大変に細かくなっていると同時に、さらに細部に関しては法務省令に委任している部分も多い。ところが、その中には、結構重要な規定もある。その一つだろうと私が思っているのが、株主総会招集通知の添付資料に関するインターネット開示による提供である。

遺留分減殺の計算方法(6)

2012-02-21 09:44:32 | 家族法
 最高裁の考えている遺留分減殺の計算方法は複雑である。複雑な上に、しかも、一つ問題点がありそうなのは、Y1は法定相続分を下回る相続分しか得られなくなってしまうということである。これは遺言者の意思に沿うのだろうか。本件判例の事案では、妻であるY1には法定相続分どおりに相続させたいというのが、遺言者の率直な意思のような気がしないではない。その意味で、原審の考え方の方が、むしろ素直のような気もするし、計算も楽である(ただ計算が楽ならいいというものでもないが)。もっとも、この点については、遺留分減殺の割合については遺言で別段の意思表示をすることができるので(民法1034条但書)、遺言でその旨の意思を表示すべし、というのが最高裁の考えかもしれない。

 以上のように、遺留分減殺の計算方法は、考え方次第でいろいろあり得ることはご理解頂けると思う。そして、遺留分が侵害される相続分の指定がなされた際の減殺方法を最高裁が示した意義は、実務上大きい。
 残される問題とすると、今回の判例が以上のような計算をする理由として述べる一つの根拠が、「相続分の指定が、特定の財産を処分する行為ではなく、相続人の法定相続分を変更する性質の行為であること」ということを述べていることから、遺産分割方法の指定として、特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言が遺留分を侵害するような場合にどうなるか(これは特定の財産を処分する行為とも言えそうである)、という点、さらに、遺贈と相続分の指定(あるいは遺贈と遺産分割方法の指定)の両方が含まれた遺言の場合の減殺方法がどうなるか、という点ではないかと思われる。

 遺留分減殺請求権を理解するのは、難しいのである。

遺留分減殺の計算方法(5)

2012-02-16 11:03:46 | 家族法
 最高裁の計算結果は、おそらく、次のような複雑な計算方法をしているはずである。

 1 まず、Yらの遺留分を考える。Y1は4分の1で、Y2、Y3はそれぞれ20分の1が遺留分である。
 2 次に、Yらの指定相続分から同人らの遺留分を差し引く。すなわち、
    Y1    →  2分の1 - 4分の1 = 4分の1
    Y2、Y3 →  4分の1 - 20分の1 = 20分の4
 3 上記2で計算した結果を割合的に比較する。そうすると、
    Y1:Y2:Y3 = 5:4:4
      (Y1の指定相続分から同人の遺留分を差し引いた4分の1は、20分の5と同じである)
    だから、分数で割合を示すと、Y1が13分の5で、Y2とY3はそれぞれ13分の4となる。
 4 Xらの遺留分の合計である20分の3を、上記3の割合でYらから減殺する。
  (1) Y1が減殺される割合 = 20分の3 × 13分の5 = 52分の3
  (2) Y2、Y3が減殺される割合 = 20分の3 × 13分の4 = 65分の3
 5 Yらの指定相続分から、上記4(1)、(2)の割合を差し引くと、遺留分減殺後の相続分となる。すると、
  (1) Y1 = 2分の1 - 52分の3 = 52分の26 - 52分の3 = 52分の23
  (2) Y2、Y3 = 4分の1 - 65分の3 = 260分の65 - 260分の12 = 260分の53
 6 当然Xらの相続分は、それぞれ20分の1(遺留分の割合そのもの)

 以上のとおりで、最高裁が示すY1らの修正後の指定相続分が計算できたことになる。
 分数の計算そのものは小学生のレベルだが、複雑なことは確かなので、上記のような計算過程を示しても、ご覧になった方々にご理解頂けているか心配である。
 以上の計算方法が、今回の判例が言う、『その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正される』という判旨について、当該事案に当てはめた具体的計算方法となるはずである。

遺留分減殺の計算方法(4)

2012-02-13 13:02:47 | 家族法
 2つめの考え方として、法定相続分を超える指定相続分を得た相続人に対する関係でだけ、遺留分が減殺されるという考え方があり得る。どうも、今回の判例の原審はこのような考え方を採用していたようである。このような考え方を採用するとどうなるかというと、Y1は法定相続分どおりなので、Y1に対しては減殺は出来ない。そして、Y2、Y3の指定相続分は、法定相続分を超え、かつ、両者とも指定相続分は同じ割合なので、Y2、Y3に対してのみ平等に減殺することになる。実際の計算は、次のとおりである。

 1 遺留分の合計は20分の3なので、Y2、Y3は、それぞれこの遺留分合計の2分の1である40分の3が減殺される。
 2 Y2、Y3の指定相続分はそれぞれ4分の1、すなわち40分の10である。
 3 Y2、Y3のそれぞれの指定相続分からそれぞれが減殺される40分の3を差し引くと、遺留分減殺後の取得分は
      40分の10 - 40分の3 = 40分の7
 4 Xら3名の取得分は、当然に遺留分である20分の1ずつ、Y1はそのまま2分の1

これが原審の考え方である。
 この原審の考え方は、私にはそれなりに合理性があるような気がするのだが、最高裁はこの考えをとらなかった。

 最高裁はどう言ったかというと、「遺留分減殺請求により相続分の指定が減殺された場合には、遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が、その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正されるものと解するのが相当である。」とした。そして、遺留分減殺により修正された結果、
   Y1の指定相続分が52分の23、
   その余のYら2名の指定相続分が各260分の53、
   Xら3名の指定相続分がそれぞれ20分の1、
になるという。
 さて、最高裁は一体どのような計算をしているのか、これだけでおわかりいただけるだろうか。判決文には、計算の経過が全く示されていないので、正直なところ、私も判決文をパッと見ただけでは全く計算方法が分からなかった。

遺留分減殺の計算方法(3)

2012-02-08 12:30:09 | 家族法
 さて、この判例の事案で、Xらは誰に対してどれだけ遺留分減殺請求が可能か。

 一つの考え方として、もし、民法1034条の規程を杓子定規に適用し、Yらに対し割合的に平等に減殺するとなると、Y1は40分の3、Y2、Y3は80分の3ずつが、それぞれ指定相続分から減殺されることになる。しかし、そうなると、Y1は法定相続分よりも少ない相続分しか取得できなくなってしまう。
 この考えを推し進めた場合、もし、事例がYらのうち誰か(例えばY1)の指定相続分が遺留分をわずかに上回る程度の指定相続分しか指定されておらず、40分の3を減殺されたらY1の方が遺留分を下回ってしまうような事例だったらどうか。もちろん、減殺される相続人Y1の遺留分を下回ってでも減殺できるという考え方が成立するはずがない。そのため、単純に割合的平等に減殺するという、計算上はもっともわかりやすい計算方法は採用し得ないと思われる。この点が、法定相続人に対する遺留分減殺請求において難しいところなのである。
 今回の判例も、もちろんこのような考え方を採用していない。