実務家弁護士の法解釈のギモン

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執行手続と法人格否認の法理(1)

2011-06-23 10:54:46 | 民事執行法
 法人格否認の法理は、実体法的効力としては、法人の法人格を当該事件限りで否認し、当該法人の背後にいる人物の責任を追及する場合に援用される。
 訴訟法上の効力としては、法人格否認の法理が既判力や執行力の拡張の場面で援用できるかどうかが問題とされる。判例はこれを否定するようである。これに対し、訴訟法学説は、限定された範囲であっても、何らかの形で手続法上の効力として法人格否認の法理の援用を認めようとする学説が多いであろうか。

 そうしたところ、近年(平成17年である)の最高裁判例としては、第三者異議訴訟の場面で、法人格否認の法理の適用を認めた判例が存在する。第三者異議訴訟も、執行力の排除を目的とした手続法上の制度であり、この第三者異議訴訟で法人格否認の法理の適用を認めるということは、一見すると、これまでの伝統的判例理論とは一線を画しているかの如くに見える。それにもかかわらず、最近の判例が第三者異議訴訟で法人格否認の法理の適用を認めたということは、どのように考えるべきか。また、法人格否認の法理と手続法との関係を広く考えた場合に、果たしてどのように考えるべきか。
 民事執行法の概説書としては名著といえる中野貞一郎教授の民事執行法〔増補新訂五版〕では、「ここで問題なのは、判決の執行力の拡張の可否ではなく、特定の財産に対し既に開始された強制執行による侵害を第三者が受忍すべき理由の有無でなければならない。」として、判例を支持する立場のようである。が、わかったようなわからないような説明である。平成17年度重要判例解説も手元にあるのだが、私の勉強不足もあり議論が難しくて、読んでもさっぱりわからない。

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