実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

所有権留保の弁済による代位(2)

2018-02-28 12:21:25 | 債権総論
 そもそも、弁済による代位によって担保権を代位する場合について考えると、第三取得者や破産管財人に抵当権の代位を対抗するには、民法501条1号によって予め代位に付記登記が必要に見える。しかし、不動産の第三取得者出現後、あるいは債務者の破産後に保証債務を履行するなどして弁済による代位が生じた場合、付記登記がなくても第三取得者や破産管財人に対抗できると解釈されている。民法501条1号は、代位弁済後の第三取得者との関係のみを規定していると解釈されているのである。
 そして、弁済による代位の効果として、民法501条柱書では、債権者が有していた一切の権利を行使することができるとされているので、仮に所有権留保を担保とみるか否かはともかくとしても、所有権留保が自動車ローンや分割払いと結びつけられている以上は、弁済による代位の対象となると考えてよいはずであり、自動車購入者破産後に保証人が代位弁済を行えば、自動車登録名義の移転の有無にかかわらず、破産管財人に所有権留保をもって対抗できると解釈できるはずである。
 そうだとすれば、上記判例は、所有権留保も弁済による代位の対象となることを確認しただけで、それほど目新しいことを判示したということではないともいえる。

 ところが、5、6年前の判例に、今回の判例とはやや結論を異にするかのような観がある判例が存在するのである。

所有権留保の弁済による代位(1)

2018-02-21 11:12:17 | 債権総論
 自動車メーカーやその子会社である販売会社による自動車の販売は、購入者が一括で売買代金を支払えない場合、系列の信販会社等でローンを組むか、あるいは分割払いになるのが普通であり、その場合、自動車の所有権は、メーカーに留保される。民法的にいえば、いわゆる非典型担保たる所有権留保である。
 では、自動車購入者の、このローンや分割払いを保証した保証人が保証債務を履行した場合に、メーカーに留保された所有権を代位するか。いわゆる、弁済による代位によって、保証人が留保所有権を所得できるか否かという問題である。

 最近の判例で、これを認めた判例が登場した。留保所有権の弁済による代位を認めた初めての判例と思われる。しかも、自動車購入者破産後に保証債務を履行した事案で、代位によって取得した留保所有権について、破産者である自動車購入者の破産管財人に対し、登録名義の移転なしに対抗できるというのである。
 この、登録名義の移転なしに破産管財人に対する対抗を認めたことには、やや意外感が伴う。

 が、なぜ意外感が伴うかには、少し説明が必要であろう。

カード破産

2018-02-14 13:40:29 | 時事
 数日前の新聞記事で、昨年1年間の個人の自己破産の申立件数が、前年比6.4%増の6万8791件で、2年連続で増えたという記事を目にした。これがその記事である。
 その記事でも指摘されているように、ピーク時は1年間の個人の自己破産の件数は20万件を超えていたので、その頃から比較すれば、申立件数は3分の1から4分の1であるが、ここに来て再び増えているというのは、あまりよろしくない。
 自己破産の申立件数が大幅に減ったのは、いわゆる消費者ローンの総量規制が導入されたことが一つの要因である。貸金業者は、年収の3分の1を超える貸し付けをしてはいけないこととなったのである。
 ところが、私の目からすると、これには落とし穴があり、あくまでも総量規制がかかるのは、貸金業者による消費者ローンだけであり、銀行のカードローンにはこの規制は及ばないのである。
 新聞記事によると、銀行のカードローンの貸出残高が増え続けているようで、まさに、この落とし穴が顕在化してきたことが、自己破産増加の一因のようである。
 ここにきて、金融庁が銀行のカードローン業務に関する検査を行っているようであるが、銀行の貸出規制がない以上、この検査も、不良債権の調査の一環として行っているだけではないかと思われる。もしそうだとすると、金融検査の本来の目的が銀行の健全経営という側面にある以上、個人に対する過剰貸付に対する規制としてはあまり効果的な検査とはいえそうにない。
 個人破産を防ぐという意味では、消費者金融業者が貸し出すか銀行か貸し出すかで、たいした違いはない。総量規制を縦割り規制ではなく銀行も含めた包括的な規制にはできないのだろうか。

詐害行為取消訴訟の二重係属(4)

2018-02-07 10:07:11 | 債権総論
 実務的には、あまり複雑な問題にはならないとは思うが、以上のように、詐害行為取消訴訟の競合を認めるのは、なんとなく違和感が強い。類似必要的共同訴訟として共同訴訟参加を認めれば十分のような気がする。
 そのように考えた場合、仮に二重提訴になっていれば、おそらく被告がそのことを指摘するであろうし、そうであれば、先の訴訟に併合すればよい。違う裁判所に係属していれば、後の訴訟を先の訴訟が係属している裁判所に移送すればよい。二重提訴になっていることを被告が指摘しなければ、二重提訴に気づかないまま二重の判決と言うこともあり得なくはないが、いずれにしても、通常の二重起訴の禁止に反した場合の処理一般の問題に解消して考えればいいだけのように思える。

 民法学者の考えだけではなく、民事訴訟法学者の意見も聞きたいところである。