実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

会社関係訴訟の被告適格(4)

2015-11-26 10:56:09 | 会社法
 実は、独立当事者参加をする際には、通常の訴えを提起する場合と同様に、訴訟当事者の双方または一方に対して請求を立てなければならないという点がネックになっているのである。つまり、解散の訴えに対して解散原因を争いたい株主が独立当事者参加を考えているとして、原告や被告に対してどのような請求を立てればよいか。これが大問題なのである。

 新株発行無効判決の事案と同じように、参加人が株主であることの確認を求める請求を立てればよいかというと、これがうまくいかない。なぜなら、参加人は、解散の前も後も引き続いて株主であることに変わりはなく、全く訴えの利益がないからである。
 この点で、新株発行無効判決が確定すると、第三者割当を受けた者が株主でなくなってしまうことから、自らが株主であることを争いうるのと、大きな違いがある。

 そのため、解散判決に関する判例の事案では、参加人は、原告の請求の棄却を求めるだけの請求を立てて独立当事者参加の申立をしたようなのである。しかし、単に請求棄却を求めただけでは、請求を立てたことになっていないといわざるを得ない。
 そのため、判例は不適法却下してしまったのである。

会社関係訴訟の被告適格(3)

2015-11-19 11:47:16 | 会社法
 この判例を見た時の印象として、なかなかうまいことを考えるものだという印象を受けたと同時に、ずいぶんと技巧的な手続だという印象をも、同時に受けた。
 そして、その技巧的な部分の問題点が、その後の判例で問題になったような気がしている。
 その判例が、解散の訴えを認容し確定した解散判決に不服な他の株主が、その解散判決を争う方法である。

 解散の訴えについて、株主は原告とはなり得るが、会社法が明示している被告は会社だけである。しかし、中小企業を想定して考えると、解散の訴えが提起される前提としては、ある株主一派(通常は多数派であろう)が役員を送り込んで会社を食い物にしているという前提で、それに反発する他の株主(通常は少数派であろう)が解散の訴えを提起するという構図が思い浮かぶ。つまり、社会現象としての実質的な争いは株主どおしの争いであることが十分に想定されるのであり、それが会社解散の訴えという形で法的紛争になってくるのである。

 しかし、解散の訴えの被告適格はあくまでも会社であるから、場合によると解散原因を争いたい株主がいることが十分に想定されても、そうした株主が当事者として訴訟に関与できるわけではなく、場合によっては、解散原因を争いたい株主のあずかり知らないところで解散判決が確定してしまうということも十分に想定しうる。

 そこで、確定した解散判決を争いたい株主が、独立当事者参加の申立をすると同時に再審の訴えを提起することの適法性が問題となった判例が現れた。
 新株発行無効判決に関する前記の判例を前提とすれば、同じようなやり方なので、適法性がそれ程問題となることはなさそうにも思える。

 ところがである。この解散判決に関する事例では、判例は再審請求を不適法却下してしまったのである。一体なぜか。

会社関係訴訟の被告適格(2)

2015-11-13 14:35:25 | 会社法
 まず、問題提起である。

 第三者割当による新株発行が、既存の株主の提起した新株発行無効訴訟によりその無効が確定した後、これに不服のある第三者割当を受けたとされる者が、確定した当該無効訴訟を覆すことができるか否か。

 新株発行無効訴訟の被告は会社とされていることから、第三者割当を受けた者のあずかり知らないところで無効訴訟が行われ、無効判決がなされてしまうことはいくらでも想定しうる。
 その場合、会社が稚拙な訴訟活動を行った結果として会社側が敗訴してしまうということもないわけではない。場合によっては、会社側も新株発行が無効であることはあまり争わないということもありうる。
 しかし、新株発行無効判決には対世効があるから、無効判決の結果は、否応なく第三者も従わざるを得ない。そうなると、第三者割当増資を受けたはずの者は、当然不服が生じることもありうるだろう。

 実は、数年前の判例で、この事案と同種事案の判例がある。
 それによれば、第三者割当を受けた第三者は、独立当事者参加の申立をすることによって再審原告としての適格を得るから、当該申立と同時に再審の訴えを提起することができるというのである。再審事由は、会社が適切な訴訟追行をしなかったことが、民事訴訟法338条1項3号の再審事由(必要な授権を欠いたこと)に該当しうるという。
 ところで、独立当事者参加の申立をする以上、当事者の双方または一方に対して請求を立てなければならない。この判例の事案では、参加人が株主であることの確認を求める請求を当事者双方に立てたようである。第三者割当増資の有効無効によって、当該第三者が株主と言えるか否かが決まることから、独立当事者参加における訴えの利益が認められるのである。
 このことによって、適法に独立当事者参加ができたと同時に、再審原告としての適格も獲得して再審の訴えを可能にしたのである。

会社関係訴訟の被告適格(1)

2015-11-06 16:11:56 | 会社法
 久しぶりの更新になってしまった。債権法の改正問題を少し離れ、別のことを述べたい。

 現行会社法が成立する前における、設立無効訴訟等のいわゆる会社関係訴訟において、誰を被告とすべきかについては明文の規定はなく、解釈によっていた。
 以上に対し、現行会社法は、会社の組織に関する訴えや役員解任の訴えなどの会社関係訴訟において誰を被告とすべきかは、法律に定められている。そのため、現在、会社関係訴訟を提起しようとする立場からすれば、被告適格について判断に迷うことは全くない。被告適格については、立法によって全て解決したかの如くである。

 しかし、私は最近、例えば被告適格を規定した会社法834条について、そこに被告とすると定められた者は、被告たるべき者についての必要条件を規定したにとどまり被告適格の十分条件ではないのではないか、という疑問を持つようになっている。
 が、これだけでは何を言いたいのか分からないであろう。順を追って私の考えを説明したい。