実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

明けましておめでとうございます

2012-01-01 21:54:00 | 日記
 明けましておめでとうございます。

 何となくブログで新年のあいさつをしたくなりました。

 昨年は、東日本大震災とこれに伴う原発事故、さらには超円高という三重苦で大変な一年でしたが、今年は景気のいい話題の多い年になりますように……。

土地区画整理事業における賦課金の負担義務者(5)

2011-12-28 09:35:28 | 日記
 ところで、その後訴訟遂行中に裁判所のホームページで何気なく判例検索をしていたら、高裁レベルではあるが、賦課金相当額の損害賠償を旧地権者(売主)に請求できるという判例を発見した。当然、ごく最近の判例である。理屈は売主の瑕疵担保責任である。平たく言えば、賦課金が賦課されるような土地だったということが、法律上の瑕疵と判断されたということである。上記の清算金に関する判例理論とは無関係に判断されたようである。
 我々としても、担保責任の規定が活用できないかどうかは、当初から検討はしており、文献の中には、数量不足の場合の担保責任(民法565条)で処理すべきという文献もないではなかった。しかし、その文献もさらっと書いてあるだけで、なぜ数量不足なのか、どこをもって数量不足と考えているのかが、必ずしもよく分からず、文献を引用して訴訟で主張しても、裁判所も理解を示さないでいたところであった。
 ちょうど、瑕疵担保責任の主張もしようと思っていたところで、高裁レベルではあるが判例を発見し、我々弁護団(と言っても、事務所の弁護士だけで戦っているので、弁護士数人の弁護団である)としては、非常に強力な武器を得たような気分でいる。
 現在、訴訟はいまだ係属中で、今後の展開が楽しみな事件である。

 ちなみに、現在全国でどれだけの区画整理事業が行われ、そのうちから事業費不足が発生している区画整理事業がどれだけあるかは、全くわからない。しかし、バブル経済が崩壊し、不動産価格が一時に比べ大幅に下落している現状下、決してこの事案は稀有な事案とは思えない。今後類似の事件がいくつも発生するのではないだろうか。

土地区画整理事業における賦課金の負担義務者(4)

2011-12-26 09:24:45 | 日記
 賦課金をマンション分譲会社に負担させようとしても、その理屈が非常に難しい。なぜなら、土地区画整理法上は、常に「現地権者」が組合員であり、その組合員に賦課するのが賦課金だから、その賦課金をマンション分譲会社(すなわち旧地権者である)に負担させることができるような条文規定は何ら存在しないからである。

 この種の事案に関する判例は、なかなか見つからない。ただし、似たような事例として、清算金の帰属が仮換地の当初所有者(売主)に帰属するのか、それとも仮換地の清算金発生時の地権者(買主)に帰属するのかが争われた最高裁判例がある。
 清算金とは、換地前の権利(すなわち従前権利)と換地後の権利とを地権者ごとに比べて不均衡が生じる場合に、金銭的に不均衡を正すために、地権者に交付し又は地権者が徴収される金銭である。地権者にとっては、清算金を受け取る場面と支払う場面があり得るわけである。この清算金がある地権者に交付される(地権者が受け取る)こととなった場合に、従前地所有者(旧地権者・売主)が受け取れるのか、換地時の所有者(現地権者・買主)が受け取れるのかが争われたのである。そして、判例は清算金交付請求権は従前地所有者(売主)に帰属すると判示している。
 この判例を非常に簡単に私なりに説明すれば、仮換地後に仮換地の土地が目的土地として売買がされ、そのまま本換地となった事例である。そして、土地区画整理事業は従前地の整備として行われる事業であるから売主にとってこそ利害関係があること、買主とすればその仮換地の土地を売買契約上の売買代金で購入出来たのだから清算金を受け取れなくても問題はないはずであること、が、ごく簡単な判例の趣旨である。
 この判例を裏から解釈すれば、清算金が地権者から徴収される場合であっても、利害関係があるのは売主であり、しかも仮換地の土地購入者は売買代金以上の金額を支払ってまでその土地を取得するつもりはないのである。したがって、清算金が地権者から徴収される場合であっても、やはりその清算金支払義務は売主が負うということになるはずである。

 我々は、この判例理論を賦課金にも応用し、利害関係があるのはマンションの売主である分譲業者であること、マンション購入者としては売買代金以上の金額を支払ってまでそのマンションを取得するつもりはなかったのだから、賦課金も実質は売主である分譲業者が負担すべきという理論で分譲業者と戦いだしたのが、今我々事務所をあげて行っている事件である。

土地区画整理事業における賦課金の負担義務者(3)

2011-12-21 10:02:21 | 日記
 土地区画整理事業は、事業途中で仮換地を行うのが普通で、事業完了時にはそのまま本換地となる。他方で、地権者も場合によっては仮換地の土地を売る場合もある。この場合、新たな所有者が自動的に土地区画整理組合の組合員とみなされる。なぜなら、「土地」の区画整理事業を行っている以上、その「土地」の事業施行時の地権者を当事者として区画整理事業を施行せざるを得ないからである。
 問題なのは、この地権者の交代後に、突如賦課金が賦課されるという事例が生じているのである。私が扱っている事件では、仮換地の土地がマンション敷地となって、マンションが分譲されていた。そうしたところに土地区画整理組合が突如賦課金を賦課してきたのである。賦課金は、賦課時の組合員、つまり賦課時の地権者に対して賦課されることになるのである。結局、マンションの所有者全員にそれぞれ何十万円という賦課金が課されたのである。
 もちろん、マンション所有者としては寝耳に水であり、もっといえば、仮換地の土地上のマンションといえども、マンション敷地部分の工事はすでに事実上終わっていることから(そうでなければマンションとして売り出せない)、区画整理事業とは何の関係もないと思っているマンション所有者がほぼ全員と言っていいくらいなのである。そうしたところに、突如土地区画整理組合の組合員だからということで、賦課金が賦課された、ということなのである。
 おそらく、マンション所有者の誰一人賦課金の支払いを納得していない。

 そこで、現在私たち事務所の弁護士が事務所をあげて行っている訴訟が、この賦課金相当額を、何とかマンション分譲会社に負担させようという訴訟なのである。

土地区画整理事業における賦課金の負担義務者(2)

2011-12-19 10:50:50 | 日記
 もともとは、区画整理事業を行う費用は、補助金が支出されるほかは、本来、区画整理を行うにあたって地権者が所有している土地面積の減歩を行い(つまり、地権者にとっては従前地の土地面積より事業終了後の土地面積の方が狭くなる。)、減歩によって余った土地(保留地という言い方をする)を一般に売り出して、その代金で事業費を捻出するというやり方をする。
 地権者にとっては、区画整理事業により土地面積は減ってしまうが、整然と整理された使い勝っての良い土地となるので、土地の価値は上昇する。そのため、金銭的な価値としては、事業前と事業終了後とでほとんど変わらないのが通常のようである。

 ところが、バブル崩壊後、この保留地の売却が、予定時期に予定金額どおりに売却できない例が生じているようで、その結果、補助金と保留地の売却代金だけでは事業費が不足してしまう例が発生しているようなのである。
 それでは追加で減歩を行うか、ということになるが、事業費不足が明らかになる頃には、通常すでに大多数の土地で仮換地が済んでおり、そこからさらなる減歩を行うことなど不可能という場合がほとんどだろうと思われる。
 そこで土地区画整理法が用意していた伝家の宝刀である賦課金を組合員に課すという手法が生じてきたのである。賦課金とは、要するに事業の経費に充てるための組合員の金銭的負担であり、いわば事業遂行のための税金のようなものとなってくる。
 バブル崩壊直後ころまでは、土地区画整理事業で組合員に賦課金を賦課するという事例は、おそらく皆無に近かったのではないかと思われる。したがって、今現在行われている土地区画整理事業でも、事業開始当初は組合員に賦課金を賦課しなければならなくなるという事態は想定していなかったと思われる。ところが、その想定していなかった事態が現実化しているのである。
 事業費が不足している以上、やむを得ないと言えばやむを得ないのだが、地権者とすれば、余計な出費であり、頭の痛いところであろう。

 前置きが長くなってしまったが、問題は、この先にある。