ところで、その後訴訟遂行中に裁判所のホームページで何気なく判例検索をしていたら、高裁レベルではあるが、賦課金相当額の損害賠償を旧地権者(売主)に請求できるという判例を発見した。当然、ごく最近の判例である。理屈は売主の瑕疵担保責任である。平たく言えば、賦課金が賦課されるような土地だったということが、法律上の瑕疵と判断されたということである。上記の清算金に関する判例理論とは無関係に判断されたようである。
我々としても、担保責任の規定が活用できないかどうかは、当初から検討はしており、文献の中には、数量不足の場合の担保責任(民法565条)で処理すべきという文献もないではなかった。しかし、その文献もさらっと書いてあるだけで、なぜ数量不足なのか、どこをもって数量不足と考えているのかが、必ずしもよく分からず、文献を引用して訴訟で主張しても、裁判所も理解を示さないでいたところであった。
ちょうど、瑕疵担保責任の主張もしようと思っていたところで、高裁レベルではあるが判例を発見し、我々弁護団(と言っても、事務所の弁護士だけで戦っているので、弁護士数人の弁護団である)としては、非常に強力な武器を得たような気分でいる。
現在、訴訟はいまだ係属中で、今後の展開が楽しみな事件である。
ちなみに、現在全国でどれだけの区画整理事業が行われ、そのうちから事業費不足が発生している区画整理事業がどれだけあるかは、全くわからない。しかし、バブル経済が崩壊し、不動産価格が一時に比べ大幅に下落している現状下、決してこの事案は稀有な事案とは思えない。今後類似の事件がいくつも発生するのではないだろうか。