実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

家族法の憲法判断(3)

2016-01-27 10:35:40 | 家族法
 しかし、時代が変われば国民意識も変わっていくのであり、法意識も変化してくる。現行法でもまだ不平等が残っているという意識、及び形式的平等がかえって実質的不平等を招いているという意識である。前者が非嫡出子の相続分の問題や再婚禁止期間の問題であろうし、後者の問題が夫婦別姓を認めない問題であろう。

 場合によると、相続分の形式的平等も実質的不平等を招いているということはないだろうか。老後の親の面倒を一生懸命に見てきた子供と、親のことをほっぽらかしにしてきた子供とで、相続分が全く平等というのである。もちろん、寄与分が認められる場合もあるだろうが、要件が厳しく、老後の面倒を見てきた子供に対して常に寄与分が認められるわけではない。そのように考えると、相続分の形式的平等だって憲法上怪しくなってきそうである。
 相続分の形式的平等は、現行法制定当初は大いに意味があったと思われる。というのも、戦前の家督相続制度を廃止し、子供の相続分を平等に扱うことにより、長男がすべてを相続するというイメージを払拭しようとするねらいも読み取れるからである。しかし、時代を経ると、むしろ責任だけ長男に押しつけ、他の子供たちは権利のみを主張するという形として、相続分の形式的平等が現れているような気がしてならない。これでは、かえって実質的に不公平と感じられても仕方がないであろう。

家族法の憲法判断(2)

2016-01-20 10:31:42 | 家族法
 今、家族法の分野で憲法14条違反が問題となってきている分野が出てきているのには、歴史的な理由があるような気がしている。

 そもそも戦前の家族法は、夫婦は平等ではなく、通常は夫である家長の権限を主体に構成されており、妻の権利は(少なくとも現在の視点で見れば)いわばないがしろにされていた。相続においても、家督相続制度を採用し(イメージとすれば、徳川将軍家を誰が継ぐかという問題と同じことを、個々の家で行っていたのである。)、それを前提とする限り子供たちの権利も平等ではなかった。しかし、戦後、新憲法が制定されたことにより、両性の本質的平等を念頭に、親族、相続が全面改正となって現在の家族法が存在している。

 現行家族法は、夫婦の権利は一応平等な内容となり、相続分も子の相続分は一応形式的一律に平等に扱うこととなったことから、当初の段階では、現行家族法の規定が憲法違反かどうかなどという発想は全くなかったであろうと思う。非嫡出子の相続分が2分の1とされていたことも、家族優先という前提でむしろ当然のことだっただろうと思うのである。再婚禁止期間についても、現行家族法になって初めて規定された制度ではなく、旧法から存在した制度だったこともあり、おそらく性別上やむを得ない問題であって、不合理な差別などという発想はほとんどなかっただろうと思うのである。ましてや、婚姻に際して夫または妻の氏を称すべしとする規定は、その形式的な規定ぶりからして完全に男女平等な規定ぶりであるから、現行法制定当時有力学者だった人が、この規定について法の下の平等違反などの憲法上の問題が生じうるなどと聞いたら、仰天するほどであろうと思う。

家族法の憲法判断(1)

2016-01-13 11:14:11 | 家族法
 ややとりとめのない内容になってしまうが、最近の憲法判例について一言。

 平成の世になってから、家族法の分野で憲法判断が求められる事件が増えているように思う。
 つい最近も、再婚禁止期間の問題と夫婦別姓を認めない現行法の問題について最高裁で憲法判断がなされた。再婚禁止期間については、100日を超える部分について違憲判断をし、夫婦別姓を認めないことについては合憲判断をしたのは記憶に新しい。
 以前は、非嫡出子の相続分を2分の1とする民法の規定が問題とされ、最高裁の判断としては、当初は合憲判断をしていたが、数年前に違憲判断がなされ、非嫡出子の相続分を2分の1とする規定は削除された。

 このように、近年、家族法の分野で憲法判断を行う判例が多い。

会社関係訴訟の被告適格(9)

2016-01-06 10:20:31 | 会社法
 年をまたいでしまったが、以上述べてきたことが、最初に述べた、被告適格を規定した会社法834条等について、そこに被告と定められた者は、被告たるべき者についての必要条件を規定したにとどまり被告適格の十分条件まで定めているわけではないのではないかという、私の考えになってくるのである。

 もし、以上の考えが許されるのであれば、確定した解散判決を争いたい他の株主は、被告側に共同訴訟参加すると同時に再審の訴えを提起することが可能になる。再審事由は、必要条件となる被告たる会社が満足に争わなかったような場合を前提に、必要な授権が欠けた場合として考えてよいと思う。この点は判例の考え方と同じでよいと思う。


 会社関係訴訟と民事訴訟法との関係を理解するのは、なかなかに難しい。このような法分野をまたいだ問題の専門学者はいないのだろうか。