実務家弁護士の法解釈のギモン

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破産管財人の法的地位(6)

2014-04-07 10:04:18 | その他の法律
 ここから先はまだあまり考えていないのだが、破産管財人の第三者性との関係では、近時の通常の議論では、破産管財人の法的地位と言うよりは、差押債権者と同一の地位という位置づけから理解していくようであるが、これも受託者としての地位から直接説明できないかどうかである。
 この点に関して信託法の方から参考となる条文を拾い上げると、受託者は、信託財産に属する財産の占有について、委託者の占有の瑕疵を承継するという規定がある。信託法15条である。これを一般化し、占有の瑕疵のみならず、意思表示の欠缺や瑕疵も引き継ぐと解釈されてしまうと、受託者の立場から直接第三者性を説明することはできなくなってしまう。
 ところが、信託法の学説の方では、他益信託(つまり、委託者自身が受益者となる信託(これを自益信託という)ではなく、委託者以外の者を受益者とする信託)の場合は、この信託法15条を適用すべきではないのではないかという議論も存在するらしい。その議論は、他益信託に関しては受託者そのものに第三者性を認める議論に通じるような気がする。もしそうだとすると、破産管財人を受託者、破産債権者を受益者として破産法律関係を考えた場合、当然他益信託となるので、破産管財人の受託者たる地位そのものから第三者性が導かれてきそうなのである。
 ただし、以上のように考えるのは、信託法15条との関係が難しく、信託法の方の議論の進化(深化)を待つしかないのかもしれない。あるいは、私が信託法の議論を知らないだけかもしれない。

 ちなみにいうと、遺贈に関する遺言執行者の法的地位も、遺言者(あるいは遺言者を相続した相続人)を委託者、遺言執行者を受託者、受遺者を受益者とする信託関係で説明できないかどうか、思いつきのように感じている。破産管財人との共通点は、いずれも民事訴訟法上、被担当者のための法定訴訟担当と理解されているという点である。被担当者のための法定訴訟担当の類型のうちで、担当者に管理処分権が帰属し、被担当者の管理処分権が制限されているものは、実体法的には一般に信託法理での説明ができないかどうか、というのが、私の思いつききである。
 ただ、ここまでくると、文字通り思いつきという以上のものではないので、あしからず。

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