使用者責任に関するやや違和感のある判例を見かけた。昨日付の最高裁判例である。
判例の言葉を借りて事案を説明すれば,「被上告人が,貸金業を営む上告人の従業員から上告人の貸金の原資に充てると欺罔され,当該従業員に金員を交付して損害を被ったことにつき,当該従業員の行為が上告人の事業の執行についてされたものであると主張して,上告人に対し,民法715条に基づき損害賠償請求をする事案である。」さらに判例から事案を引用すれば,「上告人の従業員であったAは,真実は上告人から横領した金員の穴埋めに充てる意図であったのに,これを秘して,被上告人に対し,余裕資金があれば上告人に運用させてほしいと申し向け」,「被上告人は,これに応じて,同月31日から平成18年3月10日にかけて,8回にわたり合計3100万円をAに交付した。」「Aは,被上告人から上記金員を受領する都度,自らパソコンを用いるなどして作成した預り証8通を被上告人に交付していた。上記預り証のうち7通には,当時の上告人の商号(株式会社B)及び代表取締役の氏名が印字されていたが,会社印等は押捺されておらず,うち1通には,上告人の商号及び代表取締役の氏名の記載すらなく,いずれについても,Aが個人名を自署し,押印しており,中にはAの母の氏名及び連絡先が併記されたものもあった。」という事案である。
上記事案に対して,最高裁は,民法715条の適用を否定したのである。その理由として,「本件欺罔行為が上告人の事業の執行についてされたものであるというためには,貸金の原資の調達が使用者である上告人の事業の範囲に属するというだけでなく,これが客観的,外形的にみて,被用者であるAが担当する職務の範囲に属するものでなければならない。」といい,「被上告人は,Aが担当する職務の内容,上告人の資金調達に関するAの職務権限,当該職務と本件欺罔行為との関連性等に関し,何ら主張立証をしていないのであって,貸金の原資の調達が客観的,外形的にみてAの担当する職務の範囲に属するとみる余地はない。」というのである。
しかし,使用者責任を認めなかったこの判例に,私はどうも違和感を感じる。
判例の言葉を借りて事案を説明すれば,「被上告人が,貸金業を営む上告人の従業員から上告人の貸金の原資に充てると欺罔され,当該従業員に金員を交付して損害を被ったことにつき,当該従業員の行為が上告人の事業の執行についてされたものであると主張して,上告人に対し,民法715条に基づき損害賠償請求をする事案である。」さらに判例から事案を引用すれば,「上告人の従業員であったAは,真実は上告人から横領した金員の穴埋めに充てる意図であったのに,これを秘して,被上告人に対し,余裕資金があれば上告人に運用させてほしいと申し向け」,「被上告人は,これに応じて,同月31日から平成18年3月10日にかけて,8回にわたり合計3100万円をAに交付した。」「Aは,被上告人から上記金員を受領する都度,自らパソコンを用いるなどして作成した預り証8通を被上告人に交付していた。上記預り証のうち7通には,当時の上告人の商号(株式会社B)及び代表取締役の氏名が印字されていたが,会社印等は押捺されておらず,うち1通には,上告人の商号及び代表取締役の氏名の記載すらなく,いずれについても,Aが個人名を自署し,押印しており,中にはAの母の氏名及び連絡先が併記されたものもあった。」という事案である。
上記事案に対して,最高裁は,民法715条の適用を否定したのである。その理由として,「本件欺罔行為が上告人の事業の執行についてされたものであるというためには,貸金の原資の調達が使用者である上告人の事業の範囲に属するというだけでなく,これが客観的,外形的にみて,被用者であるAが担当する職務の範囲に属するものでなければならない。」といい,「被上告人は,Aが担当する職務の内容,上告人の資金調達に関するAの職務権限,当該職務と本件欺罔行為との関連性等に関し,何ら主張立証をしていないのであって,貸金の原資の調達が客観的,外形的にみてAの担当する職務の範囲に属するとみる余地はない。」というのである。
しかし,使用者責任を認めなかったこの判例に,私はどうも違和感を感じる。