実務家弁護士の法解釈のギモン

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時効の効力は権利の取得?消滅?(2)

2017-05-12 09:45:44 | 民法総則
 時効の効力に関する学説として、確定効果説や不確定効果説があり、不確定効果説は、さらに停止条件説と解除条件説に分かれる。そして、判例通説は停止条件説だと言われている。

 消滅時効を例にとれば、時効期間が経過すれば当然に権利が消滅すると考えるのが確定効果説で、不確定効果説はそうではないという。そして、不確定効果説のうちの停止条件説は、時効の援用を停止条件として消滅すると考え、解除条件説は時効の援用権を放棄または喪失することを解除条件として消滅すると考える。
 この問題は何を想定しているかというと、時効期間経過後に債務を弁済した場合の法的状況を想定している。つまり、確定効果説に対しては、時効期間が経過すれば、債務は確定的に消滅しているにもかかわらず、時効を援用せずに債務を弁済した場合に、同時に、時効援用権も喪失するので、もはや時効を主張し得ないから弁済を有効とせざるを得ないにもかかわらず、消滅した債務の弁済だから、この弁済を有効と考えることに理論的な困難が生じるという批判があり得ると言われる。
 この困難を克服するために不確定効果説が登場するのであるが、このうち、解除条件説は、時効期間経過により、一応債務は消滅するが、時効の援用権を放棄又は喪失することによりこの効力は解除されるので、消滅しなかったことになるという。その結果、弁済により時効援用権を喪失すれば、解除条件が成就するから債務は消滅しなかったことになり弁済の有効を基礎づけられると考えるようである。ただし、この解除条件説は、時効期間経過後の債務の弁済により、債務が復活すると同時に弁済により直ちに消滅することになるから、かなり技巧的な解釈だという批判があると言われる。
 そこで停止条件説になるのだが、この説では、時効期間の経過により債務が消滅するのではなく、時効の援用を以て初めて消滅することになるという。したがって、時効期間経過後の弁済の場合でも、未だ存在している債務を弁済したに過ぎないから、最も素直な解釈が導き出せると言われる。

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