実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

臨時国会召集せず?

2015-10-16 10:23:52 | 時事
 債権法改正案が通常国会では審議されずに継続審議になったが、毎年必ずのように招集されている臨時国会を、今年は召集しなそうである。
 そうなると、債権法改正案が成立するのは、早くとも、ほぼ丸々1年先送りということになりそうである。

 債権法改正の中身がだいぶおとなしいものになったとはいっても、民法の大改正であることは間違いがないので、少し時間的余裕ができたのは、むしろ朗報かもしれない。

 今のうちに改正案を研究しておくのが適切かもしれない……。

債権法改正-請負人の担保責任(2)

2015-10-07 13:51:20 | 債権各論
 要は、請負人の担保責任も、売買の担保責任の規定で全て処理しようというということなのである。
 つまり、売買の規定は、有償契約に広く準用される。そのため、もともと売買の担保責任の規定は他の有償契約にも準用されることになっているのである。このことは、債権法改正の前後で変わらない。
 そして、売買の担保責任の規定が、契約責任説の立場から規定し直され、追完請求や代金減額請求が広く認められるようになったことから、請負人の担保責任もこれらの規定を準用するだけで十分ということになったのだろうと思われる。請負の独自の規定として修補請求について規定しても、結局は売買の追完請求の規定とダブるだけということなのであろう。

 なるほど、売買の規定の準用だけで足りるというのは、理屈ではある。
 しかし、債権法改正の一つの理念として、一般の人でもわかりやすい民法にする、というのが掲げられていたと思われる。が、請負独自の担保責任の規定が何も規定されないのは、いかにも一般の人には分かりにくい。

 請負の担保責任の改正についていえば、結局は、理屈を優先した、学者による学問的な立法ということになるだろうか。

債権法改正-請負人の担保責任(1)

2015-10-01 13:06:25 | 債権各論
 債権法の改正により、売主の担保責任の規定が大幅に改正されるのに併せて、請負人の担保責任の規定もかなり変わると言っていい。ただし、その見た目の条文改正は、売主の担保責任と請負人の担保責任とでは、だいぶ趣が異なる。

 従前、請負人の担保責任の規定は、634条以下に規定が存在し、その解釈については難しい議論が存在していた。それが、債権法改正案では、請負人の担保責任を積極的に定める規定は削除されてしまうことになったのである。ところが、請負人の担保責任の制限に関する規定は残る。この制限に関する規定は、一定の場合に担保責任が発生しないことと、期間制限からなる。したがって、当然、請負人は一定の担保責任を負うことが当然の前提となっているのである。
 つまり、請負のところでの規定では、担保責任を積極的に認める規定がなくなるにもかかわらず、担保責任の存在を前提として、それを制限する規定だけが存在するような、一見すると理解しにくい条文構造となるのである。

 「要綱仮案」の段階では、現行の民法634条を改正して、請負の目的物が契約不適合であった場合には、注文者は相当の期間を定めて修補請求できるという規定を設けることになっていた。これが、請負人の担保責任に関する積極的規定にする予定だったはずである。しかし、実際の改正案では、この種の規定さえ設けられず、民法634条は担保責任とは全く関係のない条文と化してしまう。

 これは一体どういうことか。