実務家弁護士の法解釈のギモン

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会社法改正-取締役の報酬(2)

2020-02-19 11:14:08 | 会社法
 まず、株式そのものを取締役の報酬として付与する方法については、取締役の報酬である以上、株主総会で付与する株式の上限等を定めることになり、その範囲で付与することになる。この点については、これまでも金銭以外の財産の報酬ということで不可能ではなかったと思われるが、会社法上も明示する形になった。

 もっとも、株主総会で株式報酬を定めれば、取締役会の判断で直ちに付与できるわけではなく、募集株式の発行の手続きを踏む必要がある。株式報酬の改正の最大のポイントは、上場会社が取締役に対する報酬として株式を付与する場合の募集株式発行の手続きにおいて、払込を要しない発行方法を定めた点にあると言ってよい。
 つまり、上場会社が取締役に対する報酬として募集株式を発行する場合は、発行事項として、取締役の報酬として発行するものであって払込を要しない旨、及び割当日を特別に定めることになる。

 通常の募集株式の発行の場合は、払込期日(払込期間を定めた場合は払込をした日)に株主となるが、払込は行わないので、割当日を定め、その日に株主となる、ということである。
 また、この募集株式発行の特則は、上場会社だけが利用できる仕組みとなっている。実質的に、インセンティブ報酬として株式を付与することの意味は、市場で株式を売却して換価できるからこそのインセンティブ報酬であり、株式を上場していない会社にとっては、株式報酬はあまり関係がないといえるからなのだろう。

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