実務家弁護士の法解釈のギモン

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スクイーズアウトの可否(3)

2012-06-04 10:16:12 | 会社法
 次に、大株主だけ株主として残り、他の中小零細の株主は株主から排除されることも、株主総会の手続面だけでなく、株主平等原則との関係で真正面から問題となり得ると思う。

 会社法上の株主平等原則では、株式の内容及び数に応じて平等な取り扱いをすることが求められる。そして、伝統的にこの株主平等原則は、持株比率に応じた多数決の横暴から少数株主を守る最後の砦として機能するといわれていたはずである。そして、この種のスクイーズアウトの決議の内容は、表面的にはどの株主にも平等に適用されるように見える決議ではあるが、実際には大株主だけが株主として残り、他の中小零細の株主は株主から排除される結果となる内容であることも、さんざんに述べてきたとおりである。これは、多数決の横暴そのものではないのだろうか。少数株主を守る必要はないのだろうか。
 下級審の裁判例をみると、全部取得条項付種類株式の取得の場面では、法はそもそもがキャッシュアウト的な処理も想定している以上、結果として現金処理されることも想定の範囲内だという趣旨に読める判断をしている。しかし、スクイーズアウトの場面で問題なのは、取得の対価を現金としているわけではなく、あくまで別の種類の株式と定めている点にある。はじめから現金を対価として定めて取得するのであれば、これは大株主であっても現金処理されることになるから、これならなかなか株主平等原則に反するとはいいにくい。しかし、スクイーズアウトの場面では、あくまでも取得の対価は別の種類の株式と定めながら、実際には大株主にしか1株以上の株式は割り当てられず、中小零細の株主は1株以上割り当てられることがない結果として現金処理されてしまうという、ここに問題がある。

 私には、法の濫用的な適用としか思えず、株主平等原則に反するとしか思えないのだが、違うのだろうか。

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