再度,損害賠償の合意について
これまでに述べてきたように,不法行為法も任意規定だと思っている。損害賠償の範囲(民法416条類推という解釈)も任意規定である。されば,損害の額の計算方法も任意規定の解釈に基づくことになる。民事法定利率も任意規定である。しからば,中間利息の控除についての計算方法も,事情変更の原則が適用されてもしかるべきというのが,私の考えであった。
ただし,最高裁判例は,この超低金利時代を背景としても,民事法定利率による中間利息控除という方法しか認めなかった。
現在の超低金利時代が続く限り,逸失利益について,民事法定利率で中間利息を控除された金額しか認められないのであれば,逸失利益の賠償は,給与と同じように,退職年齢に達するまで月賦あるいは年賦での請求に代わっていく可能性もある。現にそのような実例も存在するようである。この場合は,中間利息を控除される理由はないから,実質月賦や年賦の方が被害者にとって有利になるのである。そして,逸失利益は,もともとが将来発生するものである以上,逸失利益の損害賠償は,割賦請求の方が本則なのかもしれないのである。
現在の超低金利時代では,加害者の賠償能力に問題がない限り,割賦方式による逸失利益の賠償請求を求めるのが,合理的経済人の発想である。そして,この全体としての割賦金請求権は,加害者の賠償能力に問題がない限り,民事法定利率で中間利息を控除した一時金賠償額よりも,市場で高く売却できるはずである。なぜなら,全体としての割賦金請求権を,一時金賠償額と同額で購入できたとすれば,その債権の購入者は年率5分で資金運用できることと同じになるが,それは市場金利よりもかなりの高金利だからである。そうすると,市場原理からして,一時金賠償額相当額よりも高額で全体としての割賦金請求権を購入しようとするニーズが発生してもおかしくないのである。つまり,判例の考え方は,経済的合理性に欠けているのではないかとも思うのである。
判例は,そこまで考えているのであろうか。あるいはそれはそれで取引市場の問題であって,法律の理屈とは関係がないということであろうか。
本論からかなりはずれてしまったが,要するに理屈の上では,損害賠償の合意を加害行為が発生する前に,予めしておくことは,可能なのであって,その合意の性質そのものを仮に契約だとしても,そこから発生する債権債務の性質そのものは不法行為に基づく損害賠償債権であるとに変わりはないだろうというのが,私の考えである。したがって,時効期間は,やはり原則3年と考えるべきだと思うのである。
契約上の債権債務であっても,その時効期間が10年とは限らないことは,本来の契約上の債権であってもしかりであり,たとえば売主や請負人の担保責任は原則1年である。この担保責任の内容について,予め売買契約(請負契約)で特別な定めをした場合(例えば,担保責任の内容を,瑕疵の内容や程度にかかわらず一定額として予め決めてしまう等)に,任意契約に基づくものだという理由で,その時効期間が突然に10年とされてしまうわけではなかろう。そのことと,何一つ違わないということである。
違うとすれば,契約法で定める債権債務は,当事者間で何らかの契約がなければ,債権債務は発生しない。これに対し,不法行為(事務管理や不当利得を含めてもよいと思っている)は,「契約がなくても」発生する債権債務なのである。もちろん,契約が存在すれば,それに従う。(事務管理については,事前に契約がある場合というのは,結局委任契約に吸収されるような気がしており,事前契約が存在する場合が委任契約,ない場合が事務管理という位置づけができそうな気がしている。)この,「契約がなくても」発生する債権債務であるという点が,契約法が本来予定している債権債務との違いなのである。
違うだろうか。
これまでに述べてきたように,不法行為法も任意規定だと思っている。損害賠償の範囲(民法416条類推という解釈)も任意規定である。されば,損害の額の計算方法も任意規定の解釈に基づくことになる。民事法定利率も任意規定である。しからば,中間利息の控除についての計算方法も,事情変更の原則が適用されてもしかるべきというのが,私の考えであった。
ただし,最高裁判例は,この超低金利時代を背景としても,民事法定利率による中間利息控除という方法しか認めなかった。
現在の超低金利時代が続く限り,逸失利益について,民事法定利率で中間利息を控除された金額しか認められないのであれば,逸失利益の賠償は,給与と同じように,退職年齢に達するまで月賦あるいは年賦での請求に代わっていく可能性もある。現にそのような実例も存在するようである。この場合は,中間利息を控除される理由はないから,実質月賦や年賦の方が被害者にとって有利になるのである。そして,逸失利益は,もともとが将来発生するものである以上,逸失利益の損害賠償は,割賦請求の方が本則なのかもしれないのである。
現在の超低金利時代では,加害者の賠償能力に問題がない限り,割賦方式による逸失利益の賠償請求を求めるのが,合理的経済人の発想である。そして,この全体としての割賦金請求権は,加害者の賠償能力に問題がない限り,民事法定利率で中間利息を控除した一時金賠償額よりも,市場で高く売却できるはずである。なぜなら,全体としての割賦金請求権を,一時金賠償額と同額で購入できたとすれば,その債権の購入者は年率5分で資金運用できることと同じになるが,それは市場金利よりもかなりの高金利だからである。そうすると,市場原理からして,一時金賠償額相当額よりも高額で全体としての割賦金請求権を購入しようとするニーズが発生してもおかしくないのである。つまり,判例の考え方は,経済的合理性に欠けているのではないかとも思うのである。
判例は,そこまで考えているのであろうか。あるいはそれはそれで取引市場の問題であって,法律の理屈とは関係がないということであろうか。
本論からかなりはずれてしまったが,要するに理屈の上では,損害賠償の合意を加害行為が発生する前に,予めしておくことは,可能なのであって,その合意の性質そのものを仮に契約だとしても,そこから発生する債権債務の性質そのものは不法行為に基づく損害賠償債権であるとに変わりはないだろうというのが,私の考えである。したがって,時効期間は,やはり原則3年と考えるべきだと思うのである。
契約上の債権債務であっても,その時効期間が10年とは限らないことは,本来の契約上の債権であってもしかりであり,たとえば売主や請負人の担保責任は原則1年である。この担保責任の内容について,予め売買契約(請負契約)で特別な定めをした場合(例えば,担保責任の内容を,瑕疵の内容や程度にかかわらず一定額として予め決めてしまう等)に,任意契約に基づくものだという理由で,その時効期間が突然に10年とされてしまうわけではなかろう。そのことと,何一つ違わないということである。
違うとすれば,契約法で定める債権債務は,当事者間で何らかの契約がなければ,債権債務は発生しない。これに対し,不法行為(事務管理や不当利得を含めてもよいと思っている)は,「契約がなくても」発生する債権債務なのである。もちろん,契約が存在すれば,それに従う。(事務管理については,事前に契約がある場合というのは,結局委任契約に吸収されるような気がしており,事前契約が存在する場合が委任契約,ない場合が事務管理という位置づけができそうな気がしている。)この,「契約がなくても」発生する債権債務であるという点が,契約法が本来予定している債権債務との違いなのである。
違うだろうか。