給付利得の続きの前に,ちょっと気になったことを。
今朝の新聞によると,昨日,大阪高裁で賃貸マンションについての契約更新時の更新料につき,消費者契約法違反で無効とする判断がされたようである。消費者契約法10条を適用したのであろうか。この条文や同法9条による解釈は,なかなか判断が難しい。
消費者契約法が施行されて同法9条や10条が問題となった初期の事案は,入学金や授業料(いわゆる学納金)の不返還が問題となった事案だと記憶している。判例では,入学金は同条に抵触しないが,授業料の不返還は新年度が始まる3月31日までの入学辞退については抵触するというのが一応の結論といえるであろうか。ただし,私は,この学納金返還訴訟の最高裁判例をきちんと読み込んでいないので,正確にはよく分からない。
話を契約更新時の更新料に戻すと,法律上の理屈の問題としては,仮に上記高裁判決が正しいとしても,その射程はあくまでも借地借家法が適用になる事案に限定して考えた方がよいだろうと思われる。なぜかというと,借地借家法が適用になる賃貸借は,契約終了時には法定更新するのが大原則だから,特段の特約がない場合は,更新料も何も必要なく当然に契約は更新するはずだからである。その契約更新に当たり,特約をもって更新料を求めるというのは,消費者契約法10条に抵触しやすい側面があるとはいえそうだからである。
しかし,借地借家法が適用とならない賃貸借(例えば,駐車場の賃貸借の場合。ただし,駐車場の賃貸借の更新時に更新料を支払う慣行があるかどうかは,よく知らない。)については,賃貸期間が経過すれば一応賃貸借契約は終了するはずで,民法619条が適用される場合に限って,契約更新が「推定」されるにすぎない。このような契約における更新料は,特段の事情(駐車場の事例で言えば,例えば,賃貸人として土地の返還を受けて別の目的(建物を建築するなど)に利用する等)がない限り賃借人が更新料を支払うことによって,賃貸人として契約の更新をほぼ自動的に認めるという趣旨で解釈することも不可能ではなさそうだからである。この場合の更新料は,自動継続することに対する対価という側面が見て取れるので,この場合にまで消費者契約法10条違反というのは,やりすぎのように思われるのである。
法律論的には,以上のとおりかもしれないが,仮に更新料の定めが消費者契約法に抵触するとなると,経済論からすると,いずれはその分賃料に跳ね返ってくることが予想される。そのため,まさに上記訴訟で勝訴する原告はよいのであろうが,一般的に見た場合に,消費者契約の場合に更新料を認めないという判断が,これから賃貸マンションを借りようとする賃借人(消費者)にとって,金銭的に有利となるかどうかは,必ずしもはっきりしないと思われる。
要するに,一見すると安い賃料のように見える契約書である一方,更新料や無条件の敷引等の特約が付随することにより目に見えにくいところで賃貸人が儲けるということを拒否し,賃借人が負担すべき費用を「賃料」に一本化して見やすい契約書にするというのが,上記高裁判決の結果論から導かれる方向性ということになるような気がする。
学納金返還の最高裁判例も,結果として,授業料は返還しなければならないとしても,入学金は返還しないことが認められるとすると,結局,授業料を引き下げて入学金を引き上げるという動きが起きてこないとも限らない。仮にこのような動きが起きてきた場合に,それが政策的に望ましい動きかどうかは,よくわからない。
消費者契約法1条記載の目的には「消費者の利益の擁護」が掲げられているが,以上のように消費者契約を適用した結果論から予想される動きを考えると,「消費者の利益の擁護」といっても,なかなかに難しい問題である。
私の理解する消費者契約法の真の目的は,消費者にとっての形式だけの契約自由ではなく,真の契約自由を取り戻すための法律だと思っている。それこそが,「消費者の利益の擁護」そのものだと思うのである。所詮,法による価格統制は無理だし,価格統制をしようとすれば,かえって弊害の方が大きくなる可能性は高いと思うのである。
賃貸借契約に限っていえば,建物を借りることの費用(対価)を「家賃」に一本化して,賃借人が負担する費用が見やすい契約内容とした上で,他の賃貸物件との価格競争をさせるという趣旨で捉えることができれば,消費者にとって真の契約自由を取り戻すことができるかもしれない。その意味で,上記高裁判決は支持できるのかもしれない。
今朝の新聞によると,昨日,大阪高裁で賃貸マンションについての契約更新時の更新料につき,消費者契約法違反で無効とする判断がされたようである。消費者契約法10条を適用したのであろうか。この条文や同法9条による解釈は,なかなか判断が難しい。
消費者契約法が施行されて同法9条や10条が問題となった初期の事案は,入学金や授業料(いわゆる学納金)の不返還が問題となった事案だと記憶している。判例では,入学金は同条に抵触しないが,授業料の不返還は新年度が始まる3月31日までの入学辞退については抵触するというのが一応の結論といえるであろうか。ただし,私は,この学納金返還訴訟の最高裁判例をきちんと読み込んでいないので,正確にはよく分からない。
話を契約更新時の更新料に戻すと,法律上の理屈の問題としては,仮に上記高裁判決が正しいとしても,その射程はあくまでも借地借家法が適用になる事案に限定して考えた方がよいだろうと思われる。なぜかというと,借地借家法が適用になる賃貸借は,契約終了時には法定更新するのが大原則だから,特段の特約がない場合は,更新料も何も必要なく当然に契約は更新するはずだからである。その契約更新に当たり,特約をもって更新料を求めるというのは,消費者契約法10条に抵触しやすい側面があるとはいえそうだからである。
しかし,借地借家法が適用とならない賃貸借(例えば,駐車場の賃貸借の場合。ただし,駐車場の賃貸借の更新時に更新料を支払う慣行があるかどうかは,よく知らない。)については,賃貸期間が経過すれば一応賃貸借契約は終了するはずで,民法619条が適用される場合に限って,契約更新が「推定」されるにすぎない。このような契約における更新料は,特段の事情(駐車場の事例で言えば,例えば,賃貸人として土地の返還を受けて別の目的(建物を建築するなど)に利用する等)がない限り賃借人が更新料を支払うことによって,賃貸人として契約の更新をほぼ自動的に認めるという趣旨で解釈することも不可能ではなさそうだからである。この場合の更新料は,自動継続することに対する対価という側面が見て取れるので,この場合にまで消費者契約法10条違反というのは,やりすぎのように思われるのである。
法律論的には,以上のとおりかもしれないが,仮に更新料の定めが消費者契約法に抵触するとなると,経済論からすると,いずれはその分賃料に跳ね返ってくることが予想される。そのため,まさに上記訴訟で勝訴する原告はよいのであろうが,一般的に見た場合に,消費者契約の場合に更新料を認めないという判断が,これから賃貸マンションを借りようとする賃借人(消費者)にとって,金銭的に有利となるかどうかは,必ずしもはっきりしないと思われる。
要するに,一見すると安い賃料のように見える契約書である一方,更新料や無条件の敷引等の特約が付随することにより目に見えにくいところで賃貸人が儲けるということを拒否し,賃借人が負担すべき費用を「賃料」に一本化して見やすい契約書にするというのが,上記高裁判決の結果論から導かれる方向性ということになるような気がする。
学納金返還の最高裁判例も,結果として,授業料は返還しなければならないとしても,入学金は返還しないことが認められるとすると,結局,授業料を引き下げて入学金を引き上げるという動きが起きてこないとも限らない。仮にこのような動きが起きてきた場合に,それが政策的に望ましい動きかどうかは,よくわからない。
消費者契約法1条記載の目的には「消費者の利益の擁護」が掲げられているが,以上のように消費者契約を適用した結果論から予想される動きを考えると,「消費者の利益の擁護」といっても,なかなかに難しい問題である。
私の理解する消費者契約法の真の目的は,消費者にとっての形式だけの契約自由ではなく,真の契約自由を取り戻すための法律だと思っている。それこそが,「消費者の利益の擁護」そのものだと思うのである。所詮,法による価格統制は無理だし,価格統制をしようとすれば,かえって弊害の方が大きくなる可能性は高いと思うのである。
賃貸借契約に限っていえば,建物を借りることの費用(対価)を「家賃」に一本化して,賃借人が負担する費用が見やすい契約内容とした上で,他の賃貸物件との価格競争をさせるという趣旨で捉えることができれば,消費者にとって真の契約自由を取り戻すことができるかもしれない。その意味で,上記高裁判決は支持できるのかもしれない。