御池通を北に、寺町通に入ってすぐのところにレトロな建物のお店があります。「KANO」と書かれた表示、その上には、「HIGH CLASS CUSTOM TAILOR]の文字が。店のガラス部分にも同じ文字が見えます。
いつも前を通るたびに、ウィンドーについ足を止めるお店です。
古いミシン、そして洒落たスーツやコート姿の紳士たちのレトロな広告…
この日もウィンドーには、素敵な色のタータンチェックの生地が置かれていました。
その素敵に生地に吸い寄せられて、思い切ってお店の中へ。
そこは、時が止まったよう…昭和レトロを思わせる設え…大きな木のガラス戸棚には、顧客のスーツが大切に吊るされています。
ここは、「加納洋服店」という大正8年創業のテーラーです。白髪のご店主は、東京の銀座でも修業を積まれたという、いかにもテーラーのご主人という品格が漂います。今や、京都でも珍しくなった、あつらえの高級洋服店です。
建物は、昭和初期に建てられたもの。
店の奥に続く赤絨毯…訪れる顧客のフィッティングなどを行う場所です。
大きな鏡…その木製の縁取りにも風格が漂います。その鏡に映る姿は、さぞや立派に見えることでしょう。
ここで扱う服地は、英国の高級品…。
先代が大切にしていたという生地のサンプル帳を見せていただきました。
毎年、英国から仕入れたという生地。サンプル帳には、取引先である「T.KANO」の文字が…すでも英国のこの服地メーカーは、どこかの傘下になったとか。厚手のしっかりとした織り、そして絶妙な織模様…このサンプルを見に、日本の大手毛織メーカーが訪れたそうです。
店には、大きな裁ち机。
そこに、使いこんだ仕立てようの道具が置かれています。
顧客の型紙を作るための定規。
服地に裁断の線をつけるチャコは、使いやすいように、きちんと削られています。
神経を研ぎ澄ませ、寸分の狂いもなく裁断するための、裁ちばさみ。
左利きのご主人は、使いやすくするために、持ち手のところに布を巻き使っているのだとか。
使い込んだ針箱…そして、アイロン…
戸棚の中には、いろいろな種類のアイロン台が…。
顧客の体形、好みなどを深く考慮し、その人が望むスタイルに見えるスーツを仕上げる…すぐれた技術が求められる高級注文服の世界。京都の数多くの紳士たちが、ここのスーツに憧れ、何年にもわたり、通い続けたというお店です。
流行と自由度が高い婦人服と違い、型が明確な紳士服。それだけに、スーツの仕立ての良しあしは、一目瞭然です。
ピシッと体にあった、また体の欠点をカバーできるようなスーツが、誂えの魅力なのです。
既成のスーツでは味わえない至福の感覚…それが誂えの醍醐味です。
はっきり言って、誂えをする客ほど、うるさい客はいないのです。ミリ単位での直しをはじめ、微妙なバランスの違いなど、細かく注文を出すものです。それの要求に見事にこたえられるテーラー、そんな人に出会うと、もう離れらなくなるのだとか。
オーダーシャツの生地が、テーブルに
残念ながら、ここでは、女性のシャツのオーダーは受けてもらえません。
ちなみに・・・タータンチェックの服地で、ヒダスカートを作ってもらうと、9万円ほどだそう。
「憧れちゃうね~」とミモロ。そう、ホント、憧れます。
*「加納洋服店」京都市中京区寺町御池上る 075-231-1934 10:00~19:00 不定休
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