動物園の前の岡崎通を北に進むと、黒い町家があります。

ハクボクを使った手描きの表示…なんか不思議な感じのお店。入口の板戸が締まっていて、「営業してるのかな?」と、ミモロは、いつも通るたびに思っていました。
「なんのお店かな?あかりって書いてあるから、照明関係のお店だね…ちょっと覗いてみよう…」と、中が見えなくて、なんとなく入りにくい雰囲気のお店に、ある日、思いきって入ってみることに・・・・。
店内に入ると、そこは、天井からたくさんの照明が下がっている明るいお店。

「なるほどー照明のお店だから、わざと店内を暗くするために、戸を閉じているんだー納得!」
ここは、あかりの専門店「タチバナ商会」。大正時代に木屋町で照明器具の問屋をしていたそうで、現在は、4代目になる40代の店主、佐藤さんが担っています。
天井から下がる照明をはじめ、扱う品は、明治、大正、昭和のもの。古いお家などで使われていたものを、佐藤さんが手入れしたり、また現在の生活で、すぐに使えるように、コードなどを改良したもの。




天井から下がるペンダントライトと壁に付けるタイプ、またスタンドなど、さまざまなタイプが、常時1000点以上揃っているそう。
店内のインテリアもクラシックな感じ。

「なんかあたたかい感じの照明…」と灯りを見つめるミモロは、やや黄色に。

白熱灯の灯りは、青白い光の蛍光灯とは違い、やや黄色味を帯び、ロウソクのあかりを想像させます。
「今の住宅の多くは、天井に埋め込むタイプのシーリングライトが好まれているようですが、部屋を明るくするという機能性を優先させている気がします。照明の魅力は、ただ明るくするだけではありません。昔の照明には、もっと個性があり、部屋の雰囲気をいっそう高めることができたんです。ここには、今の照明器具に物足りなさを感じる人が、全国からいらっしゃいます」と。
明治、大正、昭和初期は、まだ電灯には、憧れが…。大正時代から昭和初期のころは、木屋町にあったお店には、大勢の人が押し寄せて、照明器具は、飛ぶように売れたそう。
「今は、灯りにこだわりのある人に向けて、販売をしています。本当に、昔の照明器具は、趣があり、そこに心惹かれます」と佐藤さん。
「こんな照明、素敵だなぁー」とミモロは、ペンダントライトを見上げます。

昭和生まれの人なら、昔、家にあったと思う照明が、このお店にはあるんです。
そう、このお店は、まさに昭和の香りがいっぱい…。
「2階に上がってみてください…」と店主の佐藤さんに言われ、ミモロは、お店の奥の階段へ向かいます。

階段の両脇の壁には、昭和を代表する歌謡曲のレコードジャケットなどが一面に張られて、「あ、これピンクレディー」平成生まれのミモロも知っているものも。

2階には、なんと小さな和室が。

玉すだれのような仕切りが下げられた入口。
そう、昔の家には、こんなすだれみたいなものが下がっていました。
「これ、なんのために下げるの?だって中、丸見えじゃない…カーテンとかブラインドならわかるけど…」とミモロ。「まぁ、結界みたいなものでしょうね…ここからは、別の空間ですよーっていう…」と佐藤さん。
さて、部屋の中は…

丸い卓袱台と座布団、そばには、黒い電話。「わーマンガがあるー」昭和に人気だったマンガ本などが卓袱台の上に。
「なんか昔の広告があるー」

テレビやラジオ、洗濯機、炊飯器、石鹸、薬などなど、昭和に普及した電化製品や日用品の広告がいろいろ壁に貼られています。
「わー『三丁目の夕日』の映画みたい…」ミモロには、珍しいものばかり。
すっかりこの部屋が気に入ったミモロ。おもちゃで遊び始めました。

さぁ、もうおいとましましょ…。「えーもう行くのー」と、もっとこの部屋で過ごしていたい様子です。
「今度、ポッキーやマーブルチョコレートもって来よう…」
ここで、食べちゃだめ!
2階の窓から外を見ると、「京都市美術館」の建物が。もう日は西山に沈んでいました。

店主の佐藤さんの昭和への思いが感じられるお店。昭和に育った者にとっては、懐かしいものばかり。子供のころに戻ったような心地になります。店に流れる音楽は、荒井由美のLP「ひこうき雲」。思わず「うわー懐かしい!」と口にしてしまいました。
このお店にいると、昭和の思い出が浮かびます。
ひと昔前、灯りは、今ほど、明るくなく、また、家庭に設置される数も多くはありませんでした。トイレの電球も暗くて、夜中にトイレに行くのが怖かったことを思い出します。今、トイレを怖がる子供はいないことでしょう。書斎替わりに、本や新聞を読むお父さんもいるほど、トイレは明るいスペースです。
でも、暗めな照明は、きっと悪いことばかりではなかったはず。
夜、家族が集まって、みんなで食事をしたのも、茶の間の電球の下でした。
昔の照明は、今も残る思い出を作る力があったようです。
また、灯りと言えば…以前、ヨーロッパの友人が、日本に来た時「日本の家は、灯りの表情がない…」と言っていました。天井の蛍光灯が、部屋全体を照らす日本の住まい。それに比べ、ヨーロッパは、間接照明を組み合わせ、夜の雰囲気を作り上げます。部屋のすべてが明るいわけではなく、夜の闇があるからこそ、灯りの光が映えるのだそう。
家の蛍光灯の照明に、味気無さを感じてしまう…そんな思いを抱かせる個性豊かな照明器具が揃うお店です。
*「タチバナ商会」京都市左京区岡崎南御所町22-11 電話75-762-0087 12:00~18:30 日曜休み
京都市動物園のそばです。詳しい商品の情報はホームページで。取り寄せも可能です。

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