へんな洋食屋

晩の開店前に店前の植木に水やりをしていると、直ぐ近くで「手を貸してください」と女性の声。振り向いても誰も居ない。とうとうオイラも食材以外の電柱とか街路灯の声まで聴こえる神憑り的な事に到達したかっ！と感じたが、隣の家のバイク二台に挟まり倒れている視覚障害者の女性の声だった。バイクを退かすと「手を曳いて下さい」と言う。高校以降で嫁さんの手以外と繋いだ記憶は無い。高校迄だって運動会のフォークダンスでしか女性の手は触れていない。強いて謂えば、腕相撲大会で触れたくらいだなっ！あれは組んだというンだが。へんな洋食屋では、月一程度だが盲導犬を連れた視覚障害の女性が来店してくれ細やかだが盲導犬アイメイト会員にも為っている。話しは戻る。手を曳いて導いていると、自転車に乗ったおばさんがチリンチリンと激しく警笛を鳴らして走ってきた。「オラオラっ！どいてっ！」ですなっ！ちょっと待ってよっ！と言うと、フッと気付いたのか顔を真っ赤にして自転車を降りて謝る。マトモなおばさんだった訳である。