常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

山笑う

2024年04月04日 | 登山
春が来ると、真っ先に見たいのが山の花々である。数年前は、新潟の角田山などへ遠出したものだが、近年は県内の里山である。雪解けを待つようにして咲く早春の花はやはり感動をもたらしてくれる。山中で出会った人に聞くと、今年は寒い3月だったので、花たちが一気に咲いたそうだ。毎日、里山に通って、今日はこの花、明日はあの花と、種類によって徐々に咲く花の種類を変えて咲いていくが、今年は北海道の花の季節のようだ。鶴岡の大山、下池の畔道への斜面には、先ず驚かされたのは、一面に咲くフキノトウの花だ。やがて、イチゲの花が種類と変えて、歓迎してくれる。だんだんと弱ってくる足を考えると、あと何回、この感動を味わえるか。今日の一日を大切にしたい気持ちになる。

この日は花曇り、標高は低いが、アップダウンのある山道を歩くと汗ばむ陽気であった。平日ではあるが、花を待ちかねて入山している人は実に多い。イチゲやカタクリの花が山道脇に咲きそろうなかで、仲間が目指したの珍しいルリソウだ。下池畔道脇の1ヶ所にしか所在は伝わっていない。「最近、珍種を盗掘する人はいませんが、スマホで写真に収めようとして、花の近くに立ち入り踏み付けられることが多いです。」毎日、ここで花や鳥を観察している人が話していた。スマホのカメラが進化して、入山者全員がカメラマンという状況らしい。こうしてSNSにあげることがトレンドで、写真のマナーには注意しなければならない。

登山家でもあった詩人の尾崎喜八は『山の絵本』のなかで、いわうちわとの出会いの体験をこんな風に記している。

「近くの暗い岩の上、ひかげつつじの硫黄いろ花の咲く下に、いわうちわが一面にはびこって、ほんのり紅をさした白い花の杯を傾けている。彼は艶のある緑の葉ごとその花を摘みとって、詩集の中で最も好きな「一日の王の物語」の頁へはさむ。」

詩人のこんな高尚な行為も、里山の花見にたくさんの人が訪れる時代では、やはり謹まなければならないだろう。この山の広大な斜面の、イワウチワの群落は少しだけ花を開いていたものの、花の盛りになるにはもう少し晴天の時間が必要だ。

春の山越えて日高き疲れかな 正岡子規
コメント
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