梅雨に入ると、アジサイが咲く前に、キンシバイの黄色い花が目にとまる。名に梅が入っているが、バラ科ではなく、オトギリソウ科の低木である。庭先に植えてあるのは、勢いがよく年々大きな株になり、びっしりとこの花がつくと、見ごたえがある。同じ科でビヨウヤナギもあるが、こちらは雌しべの長さで見分ける。
先日、91歳でこの世を去った田辺聖子の随筆に、花のことが出て来る。
「この桜の後、京には藤、つつじ、山吹、と慕わしき騒がしさがつづく。それにあじさい。露じめりした三千院などはあじさいにはよく適うのであろうが、いったいに京都は湿り気が多いのか、「日本のウェストコースト」といわれる神戸あたりから見ると、空気の肌ざわりが全くちがう。吹いてくる風がそのまま肌にしみこんでくるきがする。」(性分でんねん)
田辺聖子は日本の関西という風土が、その体内にしみ込んだ作家であった。その文章には、音があると言う人がいた。ユーモア、俳句、川柳、古典への深い造詣。これからも読むべき多くの作品を残してこの世を去った。ご冥福を心からお祈りしたい。