常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

山林の詩

2019年04月10日 | 日記

寒が戻って、関東に平成最後の雪、というニュースが流れている。桜の開花などの春の訪れを、ブログにアップすると、郷里の友人から羨望を交えたコメントが寄せられる。北海道は桜の蕾はおろか、まだ深い雪に覆うわれているところも少なくない。歌志内市という市がある。人口の一番少ない市と知られる悲別というドラマが生まれた町である。滝川から根室本線に乗り換えて、空知川のほとりの赤平市に隣接している。炭鉱が発掘されて、芦別と並んで多くの人が住んだが、今はさびれた街になった。

この空知川の辺りへ、開拓地をもとめて国木田独歩が訪れたことがある。国民新聞の記者をしていた独歩は、佐々木信子と恋に落ち、原生林を開拓して、ここへ移住を計画した。1894年のことである。この地を独歩に紹介したのは、札幌農学校で教鞭をとっていた新渡戸稲造である。信子の母の猛烈な反対で、結婚も移住もとん挫したしたが、独歩は有名な詩を残した。

山林に自由存す

われ此句を吟じて血のわくを覚ゆ

嗚呼山林に自由存す

いかなればわれ山林をみすてし


あくがれて虚栄の途にのぼりしより

十年の月日塵のうちに過ぎぬ

ふりさけみれば自由の里は

すでに雲山千里の外にある心地す 


眦を決して天外を望めば

をちかたの高峰の雪の朝日影

嗚呼山林に自由存す

われ此句を吟じて血わくを覚ゆ  国木田独歩

空知川のほとりは、滝川から汽車で釧路へ向かった石川啄木も、その雪景色のすごさを、歌に詠んでいることでも知られる。果てしない雪景色、そして猛烈な地吹雪。北海道の原始林の風景がそこにある。

空知川雪に埋もれて

鳥も見えず

岸辺の林に人ひとりゐき 石川啄木


コメント
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