わが家に仙人掌の小鉢が五つほどある。仙
人掌を育てることを趣味にしているわけで
はない。随分と昔だだが、嫁いだ娘が何故
か仙人掌の蒐集にはまり、たくさん買って
ベランダに置いてあったものを貰ってきた
ものだ。大抵のベランダの鉢は、花を咲か
せて死に絶えていくが、この仙人掌だけは
丈夫で健在である。脇にでた子を植えてい
けば際限もなく増えていくだろう。水を与
えるでもなく、外に出しっぱなしだ。夏に
なると花芽を長く伸ばして花を咲かせる。
秋分の日を過ぎて朝夕が急に冷え込んでき
た。もう仙人掌の花も咲かないと思ってい
たが、三連休のあたりに花芽をつけた。さ
すがに、花は小さい。寒さで花が大きくな
れないのだ。ベランダに咲く花がなくなっ
た季節に、何か得をしてような気がする。
冬になれば日当たりのよい室内へ入れて、
保護していることへのお礼の花か。
仙人掌に跔まれば老ぐんぐんと 三橋鷹女
フォークソングに「サボテンの花」という
のがあって、いさかいで同居していた女性
が去って行った部屋に、残されていたサボ
テンが歌われている。
歳時記を開くと仙人掌の花とからめて老い
らくの恋などという句も見える。仙人掌を
育てるのは、やはり女性が似合う。棘を出
して世話を焼かれるのを拒否しているよう
な姿だが、どこかユーモラスな恰好が女性
に好まれるのかも知れない。