秋の花はなぜか突然に咲く。昨日、懐かしい
香が漂ったと思ったら、生け垣の金木犀が葉
陰にひっそりと咲いていた。花はまだ小さく
写真映えしないが、強い香りがその存在をア
ピールしていた。足元に目を落とすと、真紅
の彼岸花が、秋の日差しを受けていた。別名、
曼殊沙華。釈迦が経文を説いたおり、その瑞
兆として天から降った花とされている。それ
ほどに、秋の花は突然に咲くということだろ
うか。
北原白秋に曼殊沙華の詩がある。「わが門の
竹の林に、曼殊沙華赤く咲きたり。竹の根の
一つ一つに、この華や六つ七つづつ、日に増
して数かさみゆく」。白秋の詩は、いつも昔
の日を思い出させる。しかし、生まれ故郷の
北海道では、この花の記憶はない。ラジオか
ら流れてくる美空ひばりの哀愁に満ちた「恋
の曼殊沙華」のメロディーが、深く心に刻み
こまれている。
美空ひばり-恋の曼珠沙華