川相姉妹(かわいしまい)は誰(だれ)にも気づかれないようにトラックから出た。そして、月島(つきしま)しずくが通ったのと同じ扉(とびら)を開(あ)けて中へ入った。しかしそこは、あの大男が現れたときと同じ荒涼(こうりょう)とした枯(か)れ野原(のはら)だった。二人は戻(もど)ろうとしたが、扉はすでに消(き)えていた。
琴音(ことね)が警戒(けいかい)して言った。「お姉(ねえ)ちゃん、気をつけて。またあいつが現れるかも…」
初音(はつね)は、琴音と背中合(せなかあ)わせになって、いつでも能力(ちから)が使えるように身構(みがま)えた。どこからか女の声が聞こえた。二人がそちらに目をやると、岩(いわ)の上に身体(からだ)を黒いマントで覆(おお)っているメイサがいた。目だけが異様(いよう)にギラギラ輝(かがや)いている。初音が思わず声を上げた。この目には見覚(みおぼ)えがあった。あの洞窟(どうくつ)にいた女だ。しずくが最強(さいきょう)の敵(てき)になると言ったあの…。
初音は、「あいつは強敵(きょうてき)よ。気をつけないと、こっちがやられるわ」
メイサは笑(わら)いながら言った。「そうね。あなたたち、あたしには勝(か)てないわ。でも、心配(しんぱい)しないで。あなたたちの相手(あいて)をするのは、あたしじゃなくてこの子(こ)よ」
メイサが指差(ゆびさ)すと、そこに巨大(きょだい)なトカゲが現れた。二人は思わず後(あと)ずさる。メイサは、
「あたしのことは気にしないで。ここでゆっくり見物(けんぶつ)させてもらうから」
琴音は、「冗談(じょうだん)じゃないわよ。こんなのとどう戦(たたか)えばいいのよ」
初音はそれに答(こた)えた。「やるしかないわ。力を合(あ)わせれば、何とかなるわよ」
大トカゲはすでに狙(ねら)いをつけていた。ゆっくりと二人に近づいて行く。
<つぶやき>幻覚(げんかく)の世界(せかい)では何でもありなんでしょうか? 二人はこいつを倒(たお)せるのか…。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。