みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0581「何か好い」

2019-06-25 18:50:52 | ブログ短編

 私の彼には人に言えない弱点(じゃくてん)がある。初めてそれを知ったとき、私は思わず笑(わら)ってしまった。でも、私、そういうの嫌(きら)いじゃないわよ。誰(だれ)にだって、そういうのあると思う。
 彼が私の部屋(へや)へ初めて来たときのことだ。夕食(ゆうしょく)も終わって、二人で食器(しょっき)を洗(あら)ったりしてたとき。――彼が突然(とつぜん)、後ろから私の身体(からだ)をギュッとしてきた。まったく、男ってすぐそういうこと…。
 でも、それは違(ちが)っていた。彼は、私をつかんだまま、キッチンから離(はな)れて、ギャーッと大声を上げた。私は、一瞬(いっしゅん)なにが起きたのか分からなかった。彼はキッチンの方を指(ゆび)さして、「出た、出た!」を繰(く)り返す。私は、その先を見て納得(なっとく)した。
「なんだ。Gじゃない。そんなに驚(おどろ)かなくても」
 ここで言っておきますけど、私、決(けっ)して片(かた)づけられない女じゃありませんから。掃除(そうじ)とかちゃんとしてます。私、出身(しゅっしん)が田舎(いなか)の方だから、こういうの普通(ふつう)のことなんだけどな。
 それ以来(いらい)、彼は、私の部屋へ入る前に必(かなら)ず訊(き)くようになった。
「あれ、いないよな。絶対(ぜったい)、いないよな…」
 私、それを聞くたびに、クスクスと笑ってしまう。普段(ふだん)は体育会系の頼(たの)もしい彼なのに…。後で聞いた話なんだけど。彼が子供のとき、Gが急(きゅう)に飛(と)んで来て顔にとまったことがあるらしい。それから、まったくダメになったそうだ。
 これって、何かにつかえるかな――。そんなことを考える私は、もしかして悪女(あくじょ)かも。
<つぶやき>Gはどこにでも入り込む、したたかな生物(せいぶつ)です。でも、その上を行くのが…。
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0580「しずく31~涼の素顔」

2019-06-24 18:31:29 | ブログ連載~しずく

 学校の裏手(うらて)には広い雑木林(ぞうきばやし)があった。学校の敷地内(しきちない)でゆくゆくは新しい校舎(こうしゃ)を建設(けんせつ)する予定(よてい)だったのだが、生徒数(せいとすう)が減(へ)り続けているので計画(けいかく)は棚上(たなあ)げ状態(じょうたい)になっている。
 水木涼(みずきりょう)は月島(つきしま)しずくの手を強く握(にぎ)りしめ、道(みち)のない所を枝(えだ)の間(あいだ)をすり抜(ぬ)けるようにして歩いていた。しずくは何度も声をかけたのだが、涼はまったく聞こうともしなかった。
 少し開(ひら)けた場所に出たとき、涼は急に立ち止まった。目の前には幹(みき)の太(ふと)い、枝ぶりのいい大木(たいぼく)が立っている。まるで、この林の主(ぬし)のような存在(そんざい)に思えた。
「さあ、ついたわよ」
 涼はしずくの手を離(はな)して言った。「すごい木でしょ。あなたにふさわしいと思って」
 しずくは、涼が何を言っているのか理解(りかい)できなかった。涼は大木の前まで行くと、
「どう、素敵(すてき)でしょ。私、あなたの友達(ともだち)だから…。あなたのために最高(さいこう)のステージを用意(ようい)してあげたのよ。気に入ってくれた?」
「なに? 何のことよ。涼、どうしちゃったの? 今日はなんか変(へん)よ」
 涼は楽しそうに声を上げて笑(わら)うと言った。「変じゃないわよ。これが本当(ほんとう)の私――」
 次の瞬間(しゅんかん)、涼の顔から表情(ひょうじょう)が消(き)えた。しゃべり方も冷(つめ)たい口調(くちょう)に変わり、
「知ってた? 私、あなたのこと大嫌(だいきら)いだったのよ。顔を見るのも嫌(いや)だったわ」
<つぶやき>親友(しんゆう)だと思っていたのに…。涼はどうしちゃったのでしょう。悪(わる)ふざけなの?
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0579「海賊島13」

2019-06-23 18:17:27 | ブログ短編

 島の若者(わかもの)たちが三人を見つけるのにそう時間はかからなかった。――若者たちは砂浜(すなはま)を見渡(みわた)せる木陰(こかげ)にかくれて、三人の様子(ようす)を窺(うかが)っていた。誰(だれ)から言うともなく、
「なあ、あいつら何やってんだ。砂浜を掘(ほ)り返そうっていうのか?」
「まったく馬鹿(ばか)な奴(やつ)らだ。もう掘り尽(つ)くされてるのに、何も出る訳(わけ)ないじゃないか」
「そもそも、何(なん)にも埋(う)まってなんかいないんだから。ハハハ、ご苦労(くろう)なことだ」
「おい、どうすんだよ。当分(とうぶん)やめそうにないぞ。どうやっておびき寄(よ)せるんだ」
 リーダーは黙(だま)って三人の様子を見つめていた。が、突然(とつぜん)立ち上がると、
「ありゃ、掘ってるんじゃない。埋(う)めてるんだ。穴(あな)を…」
 若者たちは三人の方へ目を向ける。いつの間にか、リーダーが砂浜へ歩き出していた。若者たちがそれに気づいたとき、もう止めることができないところまで行ってしまった。
 砂浜では、まだ作業(さぎょう)は続いていた。林田(はやしだ)も、黙々(もくもく)とスコップを動かしている。だいぶ陽(ひ)が昇(のぼ)ってきて、三人は汗(あせ)だくになっていた。伊集院(いじゅういん)はタオルで汗をふきながら言った。
「さあ、休憩(きゅうけい)しよう。このままじゃ、ぶっ倒(たお)れちまう」
 この合図(あいず)を待ちかねていたように、林田も久美子(くみこ)も砂浜にどっと腰(こし)を降(お)ろした。
 久美子は思わず呟(つぶや)いて、「こんなことになるんなら日焼(ひや)け止め塗(ぬ)っておけばよかったわ」
 その時、久美子は誰かが近づいて来ているのに気がついて、思わず声をあげた。
<つぶやき>リーダーはなぜこんな行動(こうどう)に出たのでしょう。せっかくの計画(けいかく)が台無(だいな)しに…。
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0578「海賊島12」

2019-06-22 18:18:50 | ブログ短編

 明け方になって、若者(わかもの)たちの作業(さぎょう)は終わりを迎(むか)えようとしていた。かなりいい加減(かげん)なところもなきにしもあらずだが――。そんな時、リーダーの携帯電話(けいたいでんわ)が鳴(な)った。
「はい…。何だ、おばちゃん…。どうしたの?……そ、そんな…。うん、分かった。こっちで何とかするから。大丈夫(だいじょうぶ)だって。おばちゃんのせいじゃないから…。うん、じゃ」
 ただならぬ様子(ようす)を見て、そばにいた若者が声をかけた。「どうした。何かあったのか?」
「民宿(みんしゅく)のおばちゃんからだ。あいつらがいなくなったって。いつの間にか消(き)えたって…」
「どうすんだよ。せっかく準備(じゅんび)したのに。全部無駄(むだ)になっちゃうのか?」
「とにかく、手分(てわ)けして捜(さが)そう。まだ連絡船(れんらくせん)の出る時間じゃないから、どっかにいるはずだ。いいか、あいつらに気づかれないようにするんだぞ」
 若者たちは、山を駈(か)け降(お)りて行った。――伊集院(いじゅういん)たち三人は、暗いうちにこの場を離(はな)れていた。そして三人の姿(すがた)は、あのでこぼこになっている砂浜(すなはま)にあった。
「なあ。何でこんなことしなきゃいけないんだ」
 林田(はやしだ)はスコップで砂山(すなやま)を崩(くず)しながら言った。「こんなことして、宝(たから)が見つかるのかよ」
 伊集院は砂浜を見渡(みわた)して、「そうさ。力仕事(ちからしごと)はお前の担当(たんとう)なんだから、頑張(がんば)ってくれよ」
「ほんとかよ?」林田は伊集院の顔を見て、「絶対(ぜったい)違(ちが)うだろ。もうだまされないぞ」
 林田はやけくそになって、砂浜の穴(あな)にスコップの砂を放(ほう)り込んだ。そのそばには久美子(くみこ)もいて、同じように穴を埋(う)めていた。でも、彼女は何だか楽(たの)しそうだ。
<つぶやき>さてさて、伊集院は何を考えているのでしょう。宝は見つかるのでしょうか。
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0577「海賊島11」

2019-06-21 19:03:00 | ブログ短編

「ちょっと待てよ」一人の青年(せいねん)が言った。
「もし変な噂(うわさ)が立ったら、観光客(かんこうきゃく)どころか誰(だれ)も来なくなるぞ」
 リーダーはニヤリと笑ってみんなの顔を見渡(みわた)すと、
「そこでだ。試(ため)してみようと思うんだ。ちょうど、この島にやって来ている連中(れんちゅう)で…」
「それでか、あいつらを見張(みは)ってろって言ったのは。俺(おれ)はてっきり可愛(かわい)い――」
 リーダーは少し慌(あわ)てて、「違(ちが)うぞ! 俺は、この島のことを考えてるんだ」
 みんなはクスクス笑(わら)いながら、誰が言うともなく、
「そうだ、そうだ。お前の女好(おんなず)きは昔(むかし)からだから。誰も何とも思ってないさ」
 リーダーは不機嫌(ふきげん)な顔をしたが、そこは気心(きごころ)の知れた連中(れんちゅう)である。リーダーはすぐに話を本題(ほんだい)に戻(もど)して、「あいつらは昨日(きのう)一日、島の中を調(しら)べて回っていた。宝(たから)を見つけようとしているのに間違(まちが)いないだろう。そこで、ちょっと脅(おど)かしてやろうと思うんだ。もう、民宿(みんしゅく)のおばちゃんには話をつけてあるから。今夜中に準備(じゅんび)を終(お)わらせるぞ」
 リーダーはみんなにこれからの手順(てじゅん)の説明(せつめい)をはじめた。離(はな)れた所からその様子(ようす)を見つめていた久美子(くみこ)は、何だか怒(おこ)っているような顔をしていた。すぐ横にいた伊集院(いじゅういん)は、彼女の気持ちの変化(へんか)に気づいているのか、いないのか…。何か考えごとをはじめていた。
<つぶやき>何だか、肝試(きもだめ)し的(てき)なことをするんでしょうか。これからの展開(てんかい)はいかに…。
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