ここまでだと思ったのか、エリスは引き揚(あ)げの指示(しじ)を出した。男達は急いで車に乗り込むと、急発進(きゅうはっしん)させて逃(に)げて行く。エリスはそれを見届(みとど)けると、不敵(ふてき)な笑(え)みを浮(う)かべて消(き)えてしまった。柊(ひいらぎ)あずみは息(いき)をついてみんなに声をかけた。
「大丈夫(だいじょうぶ)? みんな、よく頑張(がんば)ったわね。アキは…、怪我(けが)してない?」
アキは小さく肯(うなず)いた。まだ、震(ふる)えが止まらないようだ。川相琴音(かわいことね)がアキに言った。
「こんな時に悪(わる)いんだけど。涼(りょう)さんが襲(おそ)われて怪我をしたの。治(なお)してくれない?」
あずみが駆(か)け寄って、「どういうこと? 誰(だれ)にやられたのよ」
「さっきの、姿(すがた)が見えないヤツよ。怪我はたいしたことないと思うけど、千鶴(ちづる)さんがアキを呼(よ)んで来てって…。だから、わたし…」
神崎(かんざき)つくねは琴音に近寄って言った。「ありがとう。あなたのおかげで助(たす)かったわ。あなたには、あいつが見えてたの? どんなヤツだったか教えてくれない?」
「姿は、見えないけど…。見え方がそこだけ違(ちが)うっていうか…。うまく説明(せつめい)できないわ」
あずみが言った。「さぁ、帰(かえ)りましょう。きっと、美味(おい)しい料理(りょうり)ができてるはずよ」
――ここは、黒岩(くろいわ)たちの拠点(きょてん)のひとつ。黒岩が部下(ぶか)からの報告(ほうこく)を受けていた。
「それで、新しく入った娘(むすめ)から、どんな能力(ちから)を引き出せたんだ」
「はい。かなり有益(ゆうえき)な能力(のうりょく)です。これを使えば、人心(じんしん)の制圧(せいあつ)が可能(かのう)になるはずです」
<つぶやき>新しく入った娘って、あまりのことなんでしょうか。彼女は無事(ぶじ)なのかな?
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます