みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0344「疑惑」

2018-10-10 18:55:43 | ブログ短編

 夫(おっと)が仕事(しごと)から帰ると、妻(つま)は置き手紙(てがみ)を残して実家(じっか)へ。夫は慌(あわ)てて迎(むか)えに行ったのだが…。
「何なんだよ。この、<実家へ帰らせてもらいます>って」
 夫は妻を前にして言った。妻は、ふくれた顔をして夫をにらみつけると、「私、別れます。もう、あなたのことが信じられない」
「貴志(たかし)君、どういうことなんだ?」妻の父親(ちちおや)が口をはさんだ。「君(きみ)は、浮気(うわき)してるのかね」
「えっ、僕(ぼく)がですか? そんな、僕が浮気だなんて――」夫は妻を見る。
「私、知ってるのよ。あなた、薫(かおる)って女と、頻繁(ひんぱん)に連絡(れんらく)取ってるじゃない。スマホの通話履歴(りれき)、ちゃんと残(のこ)ってたんだから」
「薫って?」夫はしばらく考えていたが、「ああっ、それ男だよ。仕事の関係(かんけい)で連絡を取りあってるだけだから。もう、僕が浮気なんかするわけないだろ」
「うそ! そうやって、また私を欺(だま)すの?」
「じゃあ、かけてみろよ」夫は自分のスマホを妻に差し出した。
 妻はスマホを受け取ると、ちょっとためらったが、「かけるわよ。ホントにいいのね?」
 耳元(みみもと)で呼び出し音が鳴(な)りはじめる。妻は落ち着かない様子(ようす)。そして、相手(あいて)の声が…。
「はい。高木(たかぎ)でございます。柄本(えのもと)さん、どうしたんですか、こんな時間に…」
 それは、間違(まちが)いなく女性の声。妻は何も言えないまま、すぐに電話を切った。
<つぶやき>電話の相手は誰だったんでしょう。浮気の相手? それとも、薫の奥さん?
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