遠藤(えんどう)さえ子を見つけた三人は、彼女の尾行(びこう)を始めた。権藤(ごんどう)は探偵(たんてい)にささやいた。
「おい、声をかけなくてもいいのか? 命(いのち)を狙(ねら)われてるかもしれないんだぞ」
「それは…どうかなぁ?」探偵は曖昧(あいまい)に答える。
遠藤さえ子はとある雑居(ざっきょ)ビルに入って行った。三人も後に続こうとしたが、探偵が二人を押し留(とど)めた。さえ子が入って行ったのを待っていたかのように、帽子(ぼうし)にマスクをした女が後を追(お)いかけるようにビルの中へ――。三人は気づかれないようについて行った。
女たちは屋上(おくじょう)へ上がって行った。探偵たちは物影(ものかげ)から様子(ようす)をうかがう。女たちは手すりの前で何か話をしていた。遠藤さえ子の方は思いつめた表情(ひょうじょう)で肯(うなず)いていた。二人は手すりを両手で持って、さえ子の方が先に手すりの外へ出た。そして、もう一人の女が手すりを乗(の)り越(こ)えるのを待った。次の瞬間(しゅんかん)、探偵が女たちの方へ飛び出して行った。
自殺(じさつ)するのを止めた探偵は、権藤に言った。「この人が、僕(ぼく)らが追っている犯人(はんにん)です」
権藤は目を丸くした。探偵は、陽子(ようこ)にマスクの女の身体(からだ)を調(しら)べさせた。すると、折(お)りたたまれた紙(かみ)が出てきた。そこには、連続殺人(れんぞくさつじん)の犯人は自分(じぶん)ですと書かれてあった。
探偵はその女に、「これがその証拠(しょうこ)です。警察(けいさつ)に犯行声明(はんこうせいめい)を送ったのはあなたですね。あなたは、この遠藤さえ子さんを自殺させて、罪(つみ)をなすりつけようとした。違(ちが)いますか?」
<つぶやき>女は犯行を自供(じきょう)。借金(しゃっきん)の返済(へんさい)を迫(せま)られて、やむなく殺害(さつがい)を計画(けいかく)したとか…。
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