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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0368「忘れられた記憶」

2018-11-03 18:18:16 | ブログ短編

 父親(ちちおや)の遺品(いひん)を整理(せいり)していたとき、昔(むかし)のビデオテープが何本も見つかった。母親(ははおや)に訊(き)いてみると、まだ幼(おさな)かった子供(こども)たちを撮(と)ったものだという。テープを再生(さいせい)してみると、確(たし)かにそこにはまだあどけない女の子が一人で遊(あそ)んでいる姿(すがた)が映(うつ)し出された。
「わぁ、あたしってこんなに可愛(かわい)かったんだ」姉(あね)が嬉(うれ)しそうに言った。
「お姉(ねえ)ちゃん、これは私よ」妹(いもうと)は映像(えいぞう)を指差(ゆびさ)して、「ほら、ちゃんと私の名札(なふだ)を付(つ)けてる」
 実(じつ)はこの二人、一卵性(いちらんせい)の双子(ふたご)だったのだ。両親(りょうしん)も見分けがつかなくて、小さい頃(ころ)から胸(むね)に名札を付けられていた。
「だったら、あたしはどこにいるの?」
 姉はテープを早送(はやおく)りした。すべてのテープを確認(かくにん)したが、どこにも姉の姿はなかった。
「ねえ、お母さん。何であたしが映ってないのよ。どういうこと?」
 母親は困(こま)った顔をして、「実はね。この頃、あなたは家にいなかったのよ」
「えっ、そうなの? あたし、全然(ぜんぜん)覚えてない」
 妹も記憶(きおく)にないらしく首(くび)を振った。姉は訊いた。「ねえ。あたし、どこにいたの?」
 母親は遠(とお)くを見つめるように、「そうね、あなたがもう少し大人(おとな)になったら話してあげる」
「あの。あたし、もう充分(じゅうぶん)大人なんですけど。今(いま)教えてよ。お願いだから」
<つぶやき>幼(おさな)い頃の記憶には曖昧(あいまい)な部分があるものです。あなたにも隠(かく)された過去(かこ)が…。
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