宇宙空間(うちゅうくうかん)の移動(いどう)に革新的(かくしんてき)な技術(ぎじゅつ)が開発(かいはつ)された。ワープ航法(こうほう)だ。ワープに耐(た)えられる宇宙船(うちゅうせん)も完成(かんせい)し、あとは航行試験(こうこうしけん)を待つだけだ。目的地(もくてきち)は4光年先の恒星(こうせい)に決定(けってい)した。
宇宙基地(きち)からのゴーサインが出ると、宇宙船は座標(ざひょう)をセットしてワープに入った。――航行は順調(じゅんちょう)に進み、宇宙船はワープを抜(ぬ)けた。そして、目の前に現れたのは――。
艦長(かんちょう)はモニター画面(がめん)を見て呟(つぶや)いた。「どうしてだ。何で、地球(ちきゅう)が…」
どうやら船は元いた場所に戻(もど)ってしまったようだ。目の前には青い地球が浮(う)かんでいた。艦長は宇宙基地を呼(よ)び出すように命令(めいれい)したが、基地からの応答(おうとう)はなかった。
宇宙船は宇宙基地へ針路(しんろ)を向けた。だが、あるべきはずの場所(ばしょ)に基地は存在(そんざい)しなかった。その時、地球から何がか飛(と)び出してきたのを検知(けんち)した。モニターに映(うつ)し出すと、それは旧式(きゅうしき)のロケットで、宇宙へ飛び出すと宇宙船が姿(すがた)を見せた。それを見た士官(しかん)の一人が言った。
「あれは…アポロ計画(けいかく)の宇宙船です。博物館(はくぶつかん)で見たことがあります」
艦長は、すぐに地球から離(はな)れるように指示(しじ)を出した。タイムスリップしたとなると、過去(かこ)の世界に影響(えいきょう)を与(あた)えるわけにはいかない。
――艦長は士官たちを集めると、今後(こんご)の方針(ほうしん)を話し合った。だが、誰(だれ)からも解決案(かいけつあん)は出なかった。そこで艦長は、もう一度ワープをしようと提案(ていあん)した。艦長には確信(かくしん)はなかったが、試(ため)してみる価値(かち)はあるように思えたのだ。そして、宇宙船は再(ふたた)びワープに入った。
<つぶやき>はたして元の世界に戻れたのか。それとも別の時間に飛び込んでしまうのか。
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