今日は彼とデートの日。待(ま)ち合わせの場所(ばしょ)に着くと、彼はまだ来ていなかった。彼女は辺(あた)りを見回(みまわ)してみる。時間に遅(おく)れるのはいつものこと。彼女はため息(いき)をついた。
しばらく待っていると、彼がやっと到着(とうちゃく)した。でも、彼女はイヤな顔をすることはない。彼女から告白(こくはく)して付き合い始めたから…。彼女は嬉(うれ)しそうに、新しい服(ふく)を見せながら、
「どう? 似合(にあ)ってるかな? ほら、この間(あいだ)、雑誌(ざっし)に載(の)ってた……。これ可愛(かわい)いねって言ってたじゃない。だから、買っちゃった」
彼はそっけなく答えた。「そうだっけ? まあまあじゃない」
「そうだよね。きれいなモデルさんが着てたから。あたしなんかじゃ…」
「俺(おれ)、あんまり時間がないんだ。友だちと待ち合わせしてて」
「えっ、何で? 今日はあたしと……。そ、そうなんだ。わかった。じゃぁ…」
彼のスマホが鳴(な)り出した。彼は彼女に背(せ)を向けてスマホを見る。そして彼女に、
「わるい。もう行かなきゃ。遅れると、うるさいんだよ。じゃあなぁ」
「ちょ、ちょっと待ってよ」彼女は、彼の腕(うで)をつかんで思わず叫(さけ)んだ。
「ふざけんじゃねぇぞ、こら! おめぇ何様(なにさま)のつもりだ! こっちがおとなしくして…」
彼女はここで我(われ)に返ったようだ。だが、すでに遅かった。彼の顔は恐怖(きょうふ)でこわばり、一目散(いちもくさん)に逃(に)げ出してしまった。彼女は、頭をかかえて大きなため息(いき)をついた。
<つぶやき>こんな男はペケです。でも、彼女ってどういう娘(こ)なんでしょ。気になるわ。
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