０９０３「離婚の危機」

　夫(おっと)は突然(とつぜん)のことに唖然(あぜん)として言った。「何で、そんなことになるんだよ」
　妻(つま)は、「あたし、やっぱりあなたとはやっていけないわ。あたしたちの結婚(けっこん)は…」
「ちょっと待てよ。何でそういうことになるんだ？　俺(おれ)が何をしたって…」
「だって…、あなたが…、あんなことをする人だなんて、思ってなかったから…」
「あんなことって…、何だよ。はっきり言ってくれよ」
「そ、そんなこと…、あたしの口(くち)からは言えないわ」
「いやいや、言ってくれなきゃ分かんないだろ？　だって、俺は浮気(うわき)もしてないし、やましいことなんかひとつもないはずだ。なのに、何で離婚(りこん)ってことになるんだよ」
　妻は、悲(かな)しげな目で夫を見つめた。そして、小さなため息(いき)をつく。夫は、
「いやいや、おかしいだろ？　俺は、ごく普通(ふつう)の人間(にんげん)だ。どこにでもいる――」
「あなた、本当(ほんとう)にそう思ってるの？　信(しん)じられないわ。やっぱりあたし、あなたとは…」
「ちょっと待てよ。俺の方が信じられないよ。まるで、俺が…。俺は、変な趣味(しゅみ)もないし、ノーマルな人間だ。お前から、離婚を迫(せま)られるようなことなんか…」
　妻は、今にも泣(な)き出しそうになっていた。夫は何が何だか分からない。
「分かった。いや…、分かんないけど…。俺が悪(わる)かったよ。だから、離婚だけは…」
＜つぶやき＞新婚生活(しんこんせいかつ)はいろいろあるのかな？　好(す)き嫌(きら)いとか、生活習慣(しゅうかん)も違(ちが)うからね。
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