僕(ぼく)は友人(ゆうじん)の招(まね)きで、彼の家へ遊(あそ)びに行った。友人は僕の来訪(らいほう)をとても喜(よろこ)んで、
「よく来てくれたね。君(きみ)に、ぜひ見せたいものがあるんだ。さぁ、入ってくれ」
僕は彼に言われるままに家に上がり込んだ。彼は一人暮(ぐ)らしなのだが、思った以上に家の中は片(かた)づいていた。彼は奥(おく)の部屋の扉(とびら)の前で僕に言った。
「ここさ。まだ誰(だれ)にも見せたことないんだけど、君だったらこういうの好(す)きだと思って」
「何だよ。こういうのって?」
「それは、中に入ってみれば分かるさ」
「いや、それはそうなんだけど…。僕が、何を好きなのか、君に分かるはずは――」
「分かるさ。君とは長い付き合いなんだから」
「長いって…、せいぜい3年くらいじゃないか。それに、そういう話、したことないだろ」
「3年もあれば分かるよ。君の趣味(しゅみ)くらいはね。だって、君は単純(たんじゅん)だから」
「まさか…、君は、僕に変な趣味を押(お)しつけようとしてるんじゃないのか?」
「そんな…。押しつけるつもりはないさ。でも、きっと君も、好きになるはずだ」
僕は躊躇(ちゅうちょ)した。言われるままに入ってしまったら、きっと後悔(こうかい)するだろう。だから、
「まず、中に何があるのか話してくれ。そうじゃなきゃ、僕は…、僕は入らない」
<つぶやき>何があるのでしょ。あんなのとか、こんなの…。まさか、やばいものかも…。
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