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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1050「しずく125~戦意喪失」

2021-04-13 17:44:29 | ブログ連載~しずく

 神崎(かんざき)つくねの攻撃(こうげき)は一方的(いっぽうてき)だった。月島(つきしま)しずくは何度も倒(たお)され、傷(きず)だらけになっていた。それでもしずくは立ち上がり、ふらふらになりながらもつくねに向かって行った。
 変化(へんか)が起きたのは、しばらくたってからのことだった。突然(とつぜん)、つくねの目から涙(なみだ)があふれてきたのだ。それに一番驚(おどろ)いたのは、つくね自身(じしん)だ。涙はぬぐってもぬぐっても止まることはなかった。つくねは目がかすんできて、動きが鈍(にぶ)くなってきた。それでもつくねは、やみくもに拳(こぶし)を振(ふ)りまわし、しずくを攻(せ)め立てた。しずくは、ここで初めて攻撃をかわして、つくねの拳を両手(りょうて)で受(う)け止めた。
 それは一瞬(いっしゅん)のことだった。しずくの手から光が放(はな)たれた。その眩(まぶ)しい光は、つくねの戦意(せんい)を喪失(そうしつ)させた。その場に座(すわ)り込んでしまったつくねに、しずくは笑(え)みを浮(う)かべて言った。
「約束(やくそく)は果(は)たしたわよ。あなたならきっと…取り戻(もど)せるわ……」
 しずくは気を失(うしな)ってしまった。つくねの顔に一瞬、戸惑(とまど)いの表情(ひょうじょう)が表(あらわ)れた。涼(りょう)たちがしずくの名を叫(さけ)ぶと、つくねは我(われ)に返(かえ)って姿(すがた)を消(け)してしまった。
 涼と初音(はつね)は駆(か)け寄(よ)ると、しずくの身体(からだ)を抱(だ)き起こした。しずくは目を開けると、
「ねぇ、この傷…、残(のこ)っちゃうかなぁ。もう、美人(びじん)が台無(だいな)しよねぇ。ハハ……」
「バカ! なに言ってるのよ」涼が涙をにじませて、「誰(だれ)が、美人なのよ」
<つぶやき>これは作戦(さくせん)なの? つくねが再(ふたた)び現(あらわ)れたとき、記憶(きおく)が戻っているのか…。
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1045「しずく124~手を出すな」

2021-03-16 17:43:17 | ブログ連載~しずく

 しばらくの間(あいだ)、二人は向(む)き合っていた。相手(あいて)の出方(でかた)を見ていたのだ。最初(さいしょ)に動いたのはつくねだった。つくねは薄笑(うすわら)いを浮(う)かべると、一瞬(いっしゅん)、姿(すがた)を消(け)した。それと同時(どうじ)に、しずくの身体(からだ)が吹(ふ)き飛んで壁(かべ)に激突(げきとつ)した。つくねは姿を現(あらわ)すと言った。
「どお、あたしの攻撃(こうげき)をかわすことなんかできないでしょ」
 屋上(おくじょう)へ出る扉(とびら)から水木涼(みずきりょう)が飛び出した。そして、しずくをかばうようにして叫(さけ)んだ。
「止めろよ! お前、私たちの仲間(なかま)だろ。何でこんなことするんだ?」
「仲間? なに言ってるの。あたしは――」
 しずくが声をあげた。「涼、いいのよ」しずくは壁に寄(よ)りかかるようにして立ち上がると、
「あなたは手を出さないで。初音(はつね)も下がってて。ここは私に任(まか)せてよ。何もしないで…」
 いつの間にか、川相(かわい)初音はつくねの後ろに立っていた。つくねは嘲笑(あざわら)うように、
「あたしはいいわよ。みんなまとめて片(かた)づけてあげても」
 しずくは、つくねに近づきながら言った。「あなたの相手は、私だけよ。そうでしょ?」
 涼と初音は二人から離(はな)れて、成(な)り行(ゆ)きを見守(みまも)ることにした。つくねは、また姿を消すと、しずくの目の前に現れた。そして、しずくを殴(なぐ)りつけ、蹴(け)り飛ばした。
 初音が思わす叫んだ。「何でよけないのよ! あなたなら、かわせるでしょ」
 つくねは倒(たお)れているしずくの胸元(むなもと)をつかみあげて言った。「本気(ほんき)出さないと、死(し)ぬわよ」
<つぶやき>しずくはどうして反撃(はんげき)をしないのか? つくねが強(つよ)すぎるのか、それとも…。
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1040「しずく123~約束」

2021-03-06 17:54:40 | ブログ連載~しずく

 柊(ひいらぎ)あずみが教室(きょうしつ)のドアを開けると、みんな一斉(いっせい)に席(せき)についた。でも、生徒(せいと)たちのざわつきは治(おさ)まらなかった。先生の後から、女の子が入って来たからだ。水木涼(みずきりょう)はそれを見て、川相初音(かわいはつね)をつっついてささやいた。
「ねぇ、どうなってるのよ。しずくが来るなんて聞いてないけど」
 すかさず柊先生が、「そこ、勝手(かって)にしゃべらない。じゃあ、みんなに転校生(てんこうせい)を――」
 しずくのことはみんなの記憶(きおく)から消(け)されていた。ということは、みんなにとっては初対面(しょたいめん)ということだ。月島(つきしま)しずくは緊張(きんちょう)した面持(おもも)ちで挨拶(あいさつ)を終えると、用意(ようい)されていた席についた。途中(とちゅう)、しずくは神崎(かんざき)つくねの横(よこ)を通った。一瞬(いっしゅん)、二人の目が合った。
 何事(なにごと)もなく午前中(ごぜんちゅう)の授業(じゅぎょう)が終わると、涼は教室を出て行くしずくを追(お)いかけた。その後から初音もついて行く。しずくは階段(かいだん)を登(のぼ)って校舎(こうしゃ)の屋上(おくじょう)へ出た。そこで待ち構(かま)えていたのはつくねだ。つくねは嬉(うれ)しそうにしずくに言った。
「あなたが、月島しずくさんね。来てくれてありがとう。パパが言ってたわ。あなたって、すごい能力(ちから)を持ってるかもしれないって。もしそうなら…」
「もしそうなら…」しずくは繰(く)り返して、「あなたとはやりたくないわ。だって私たち――」
「あたしから逃(に)げられると思ってるの? あなたにどんな能力(ちから)があるか確(たし)かめてあげる」
「じゃあ…、私も、あなたとの約束(やくそく)を果(は)たすことにするわ」
<つぶやき>まさか二人が対決(たいけつ)することになるなんて。どんな決着(けっちゃく)になるんでしょうか?
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1035「しずく122~別人?」

2021-02-24 17:51:08 | ブログ連載~しずく

 水木涼(みずきりょう)は生徒(せいと)たちを押(お)しのけて、神崎(かんざき)つくねの手をつかんで言った。
「どこにいたんだ? あいつらに連れて行かれて…。みんな心配(しんぱい)してたんだぞ」
 つくねはちょっと驚(おどろ)いた顔をしたが、涼の手を両手で握(にぎ)り返して、「水木さん、何を言ってるの? あたし、誰(だれ)にも誘拐(ゆうかい)されてないから。もう、変なこと言わないで…」
「おい、どうしたんだ? お前…、そんなしゃべり方じゃ…」
 以前(いぜん)のつくねは、誰とも仲良(なかよ)くすることなどなかった。それに、他人(ひと)に笑顔(えがお)を見せることも…。それが、目の前にいるつくねはおしゃれをしていて、まるで別人(べつじん)のようだ。
 涼は、「お前、何かされたのか? それで――」
 川相初音(かわいはつね)が止めに入った。周(まわ)りの生徒が訝(いぶか)しい目で涼を見つめていた。
 つくねは微笑(ほほえ)みながら、「もう、みんなをびっくりさせようとしたでしょ」
「そうよ。だから止めなって言ったじゃない。ほら、もう行くよ」
 初音は涼を席(せき)へ押しやっておいて、つくねに訊(き)いた。
「ねぇ、あなた、お休みしてたじゃない。どこか、具合(ぐあい)でも悪(わる)かったの?」
「実(じつ)はね、ちょっと入院(にゅういん)してて…。でも、もう大丈夫(だいじょうぶ)よ。元気(げんき)になったから…。パパも、学校へ行ってもいいって許可(きょか)してくれたし」
「へぇ、それはよかったわね。あなたのお父さんって…」
「病院(びょういん)の院長(いんちょう)をしてて…。すっごく優(やさ)しいのよ。あたし、パパのこと大好きなんだ」
<つぶやき>これはもう、完全(かんぜん)に洗脳(せんのう)されてるんじゃ。これからどうなってしまうのか?
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1030「しずく121~おとなり」

2021-02-14 17:45:47 | ブログ連載~しずく

 水木涼(みずきりょう)は、烏杜(からすもり)高校の近くにあるアパートに住(す)むことにした。ここなら、朝寝坊(あさねぼう)しても学校(がっこう)に遅刻(ちこく)しなくてすむからだ。
 朝、涼は余裕(よゆう)で部屋(へや)を出た。その時、隣(となり)の部屋のドアが開いた。中から出てきた人を見て、涼は思わず呟(つぶや)いた。「初音(はつね)…? な、なんで…」
 それは、川相(かわい)初音だった。初音はいつもと変わらず返事(へんじ)を返した。
「今日は寝坊しなかったのね。良かったわ。起こしに行こうかと思ってたのよ」
「何で隣にいるんだよ? 昨日(きのう)、そんなこと一言(ひとこと)も言ってなかっただろ」
「さぁ、行きましょ。せっかく早く起きたのに、遅刻したら何にもならないわ」
 初音はさっさと歩き出した。涼は、慌(あわ)てて部屋の鍵(かぎ)をかけると、初音を追(お)いかけた。
「ちょっと…待てよ。あっ、まさか…。先生(せんせい)に住むとこ探(さが)してもらったのか?」
「そうよ。先生から、あなたのこと頼(たの)まれたのよ。ちゃんと見てあげるようにって――」
 二人は何だかんだと言い合いながら、いつの間(ま)にか仲良(なかよ)しに戻(もど)ったようだ。校門(こうもん)の前まで来ると、初音は立ち止まった。初音にとっては久(ひさ)しぶりの学校だ。初音は、ここに戻(もど)るつもりはなかった。でも、しずくから学校に登校(とうこう)するように言われたのだ。
 教室に入ると、人だかりができていた。その中心(ちゅうしん)にいた生徒(せいと)を見て、二人は目を見張(みは)った。そこにいたのは、神崎(かんざき)つくねだったのだ。
<つぶやき>つくねが戻って来ました。でも、どうして…。あの父親から逃(に)げ出したのか?
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